憲政史研究家の倉山満氏が教える歴史のリアル。日本人が世界史と思い込んでいるのは、東洋史と西洋史を合わせただけの「偽物の世界史」である。しかも、東洋史は単なる中華王朝の興亡史であり、西洋史はもとをたどればギリシャ文明に行き着くヨーロッパ史にすぎないのだ。
※本記事は、倉山満:著『若者に伝えたい 英雄たちの世界史』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです
日本人が習う「世界史」=「4か国とオマケの歴史」
東は朝鮮半島から西はポーランドまで、モンゴル帝国はユーラシア大陸を闊歩した大帝国です。そのモンゴル帝国を築いたのがチンギス・ハーンです。そしてチンギス・ハーンとは「世界史を作った人」です。
では、その「世界史」とは何か。日本人が世界史と思い込んでいるのは「偽物の世界史」です。東洋史と西洋史を合わせただけで、世界史だと思い込んでいます。東洋史は単なる中華王朝の興亡史であり、西洋史はもとをたどればギリシャ文明に行き着くヨーロッパ史にすぎません。
しかも、イギリス・フランス・ドイツだけでヨーロッパ全部を語っています。その他の大多数の国々はオマケ扱いです。日本人が習う世界史とは「4か国とオマケの歴史」なのです。人によって世界史の定義は変わって良いとは思いますが、これはひどすぎます。
チンギス・ハーンが作った世界史とは「人類の過半数が関わった最初の歴史」です。チンギス・ハーンが登場するまで、ユーラシア大陸全土が1つの歴史でつながることはありませんでした。
チンギス・ハーンの登場で、初めてアジアとヨーロッパがつながりました。この時代は、1人の人間、1つの国の影響下にあった最初の時代。そんな見方ができるでしょう。
モンゴルが影響を与えた範囲は、日本からヨーロッパまでです。モンゴル人が実際に足を延ばした西端はポーランドでした。しかしブリテン島まで含めてモンゴルの影響を受けています。
一方で、アフリカ大陸のほとんどや南北アメリカ大陸、南半球の人たちにとっては関係ないかもしれません。しかし彼らの人口を全部足しても、当時の人類の半分以下です。だから「人類の過半数が関わった歴史」なのです。
チンギス・ハーンは、人間が住む大半の地であるユーラシア大陸全土に影響を及ぼした最初の人です。ではそれまでの世界に、人類の過半数に影響を与えるような人はいなかったのでしょうか。振り返ってみましょう。