一体感を生み出した「みんなで乾杯しよう!」

ライブが始まった直後も、前方のお客さんが「これは立ち上がってもいいのか……な?」という感じで、周りの様子を探りながら立ち上がると、まるでウエーブのように後方の観客も続々と立ち上がった。

声を出して騒ぐのはNGだが、立って楽しむことまでは制限されていない。試行錯誤しながら、新しい楽しみ方をひとつずつ見つけていく作業。ある意味、この日しか体感できない貴重な瞬間がたくさんあったライブでもあった。

もうひとつ気をつけなくてはいけないのが熱中症だ。

これはもう水分をたくさん摂るしかないのだが、お客さんの中にはさまざまな理由で「ライブ中にあまり水を飲みたくない」という人もいる。「ペンライトやタオルで両手がいっぱいで水を飲みにくい」という人もいるだろう。

でも、この日に関しては危険な暑さであり、とにかく水分補給はマストだった。

そこでメンバーが繰り出したのは「私たちも水を飲むから、みんなも飲んでね」という流れから、自分たちのドリンクを客席に向けて「みんなで乾杯しよう!」という呼びかけ。こう言われたら嫌とは言えない。もちろん「カンパーイ!」とは叫べないけど、無言のうちに一体感は生まれていた。

そして、換気をするために30分に1回のペースで、前後の扉が全開された。基本的にはMCコーナーがその時間に充てられ、それがライブにメリハリを与えてくれていたが、空気を入れ替えることは安全対策上、とても大事なことであるのと同時に、ちょっとした落とし穴も作っていた。

とにかくステージ上が暑くなってしまうのだ。キンキンに冷房が効いていても、ライティングが施されているステージは高温になりがちなのだが、頻繁に扉を開閉することで、その傾向はより顕著になってしまった。

日テレらんらんホールはステージが広い。横に長いのはもちろん、奥行きもあるから、パフォーマンスも大きくなる(ちなみにメンバーはライブ直前にPCR検査を受け、全員が陰性であることが確認できたので、ステージ上のパフォーマンスは、ある程度は密になってもOKということになった)。

結果、想像を遥かに上回る汗が噴き出した

「浴衣に着替えるために、メンバーが順番にステージからハケる」という演出になっていたが、それが何よりの救い。なかなかメンバーが戻ってこなくて、MCが少しグダグダになる現象も見られたが、それは着替えにてこずっていたわけではなく、バックステージでクールダウンする時間を取っていたからだった。全員がいっぺんにハケる形になっていたら、ひと呼吸する時間すら取れず、ちょっと大変なことになっていたかもしれない。

鈴木萌花のマイクにトラブルが発生するアクシデントもあったが、どうやら大量の汗でヘッドセットのマイクが実質上「水没」したような状況になってしまったらしい。