美しい鏡張りの水面に吸い込まれそうになる

このハイキングコースはバンガロー村を通過するのが特徴となっている。その名の通り、バンガローが立ち並ぶキャンプ場のようなところで、派手さはないもののなかなかいい雰囲気だ。

子連れで泊まっていると思しき家族の姿が目立ったから、ファミリー向けのキャンプ施設なのかもしれない。実は我が家ではキャンプは夏の定番だったりする。次回は泊まりで来ようと心に誓った。

バンガロー村を後にすると、再び車通りのある舗装路に出た。ここをしばらく歩いて進んで、やがて現れる川沿いの散策路へ入ると、これぞまさに養老渓谷とでも言えそうな勢いのある景色に変わった。マップを見ると「中瀬遊歩道」と名付けられている。ハイキングコースのハイライトと言っていいだろう。

予想外だったのは、渓流という割には川の流れがそれほど激しくなかったことだ。ところどころ流れがほとんどない巨大な水たまりのような場所があって、水面に樹木の葉叢が写り込んでいる様も美しい。ウユニ塩湖に代表される鏡張りの絶景のような感じで、写真に撮るととても絵になる。

▲中瀬遊歩道をてくてく進む。美しい鏡張りの水面に吸い込まれそうになる

遊歩道には「マムシに注意」などという看板も立てかけられていた。川の中に膝まで入って釣りを楽しんでいるワイルドな人をちらほら見かけたりもした。養老渓谷へは初めて訪れたのだが、元千葉県民としてはこんなに自然が豊富な場所が県内にもあったのだなあと、いまさらながらに感心させられたのだった。

渓谷沿いの遊歩道が終わると景色は一変して、空が開けた。大きな車道沿いに建物が点在する。

「温泉」と書かれた幟が風にはためいているのを見て、僕は目の色を変えた。「おおおお、おんせんっ!」と無意識のうちに叫んでしまった。たっぷり歩いて汗もいっぱいかいた身としては、お風呂がこのうえなくありがたいものに思える。

養老渓谷周辺は房総随一の温泉郷なのだそうだ。それも普通の温泉ではなく「黒湯」と呼ばれるユニークなお湯で知られる。トロトロとした肌触りの、いわゆる美肌の湯である。

「喜代元」という旅館で日帰り入浴ができると聞いて立ち寄った。ここまで来ればハイキングコースももうゴールが間近で、あとは駅まで帰るだけだから、最後にひとっ風呂浴びていくとちょうどいい。

▲養老渓谷駅にも足湯が併設されている。鉄道に乗る場合は無料で利用可能

出発したときより身も心もサッパリしながら養老渓谷駅へ帰還。まだまだ日も高い時間帯だから、湯冷めする心配もない。

小湊鐵道の復路はタイミング良く里山トロッコの時間に合わせることができた。

乗車券のほかに500円の着席整理券を購入して乗り込む。トロッコ列車は窓がないオープンエア仕様の車両を連結しているので、風を浴びながらの走行がしみじみ心地いい。自然散策をたっぷり楽しみ、温泉にも浸かって、さらには名物列車にも揺られる。盛りだくさんの半日旅になった。

▲ついでに小湊鐵道の「里山トロッコ」で帰路につくというオマケ付き
<養老渓谷>
住所:千葉県市原市/夷隅郡大多喜町
アクセス:小湊鐵道養老渓谷駅から徒歩で
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養老渓谷観光協会:http://www.youroukeikoku.com/