ど本来は行楽の秋ですが今年はコロナ禍。どこかへ行きたいけれど、泊まりがけで出かけるのはちょっと……。かといって、家でマッタリするのもなんだかもったいない。そんなとき、東京から半日で行って帰って来られる、近場でおもしろそうなスポットをご紹介します。

※本記事は、吉田友和:​著『東京発半日旅』(ワニブックス新書:刊)より一部を抜粋編集したものです。

養老渓谷(千葉県)で自然散策→温泉→名物列車

「養老」と聞くと岐阜県にある「養老の滝」が真っ先に思い浮かぶのだが、千葉県にも「養老渓谷」という似た地名の場所がある。房総半島の内陸部、市原市と大多喜町にまたがる渓流沿いにハイキングコースが整備されている。

秋の紅葉がとくに有名だが、新緑の季節も美しいと聞いて、お弁当持参で半日旅に出かけた。

この手の自然散策系スポットへは、車がないと行きにくかったりするものだが、養老渓谷は列車でもアクセス可能な点は特筆すべきだろう。というより、むしろ列車の旅人向けと言っていいかもしれない。ハイキングコースが列車を降りてすぐの駅前から始まっているからだ。

また、最寄りの養老渓谷駅は、小湊鐵道というローカル線の駅であることにも注目したい。小湊鐵道では「里山トロッコ」と名付けられたトロッコ列車を運行しており、鉄道ファンの間で注目を集めている。つまりトロッコ列車の旅と渓谷散策を同時に楽しめ、一石二鳥というわけだ。

JR内房線を五井駅で降り、小湊鐵道に乗り換える。

養老渓谷駅に到着すると、駅舎にハイキングマップが置かれていたのでありがたく一枚頂戴した。「養老渓谷温泉郷」のサイトにてPDFで公開されているのと同じマップのようだ。僕が調べた限りでは、養老渓谷でハイキングをするならこのマップが最も分かりやすい。スマホが普及し、どこでもネットに接続できる時代になったが、山歩きなどをする際にはまだこうした紙の地図のほうが心強い。

▲養老渓谷駅。次の上総中野駅でいすみ鉄道に乗り継いで外房へ抜けられる

マップで紹介されている三種類のコースのうち「バンガロー村・弘文洞跡コース」を歩いてみることにした。総歩行距離は約7.4キロと比較的手頃で、主要な見どころを押さえられる入門者向けのコースだ。

同じ列車に乗ってきた人たちもみなハイキングが目的のようで、一斉に同じ方角へと歩き始めたのがなんだかおかしい。

駅の裏側へ回り込むようにして、小湊鐵道の単線の線路を渡ると、のどかな田舎道へ出た。歩道と車道の区別がない。車が滅多に通らないのをいいことに、ど真ん中を堂々と歩くのが爽快だ。

やがて川にかけられた橋が現れて、これを渡ったところで別のハイキングコース「大福山・梅ヶ瀬コース」との分岐点になった。そちらへ行くと「もみじ谷」という紅葉スポットなどがあるというので、秋の旅ならこっちのほうがいいかもしれない。

分岐点を過ぎると、緩やかな上り坂が続いた。といっても、周囲は木々の緑に溢れており、全然苦ではない。背の高い杉の木がずらりと並ぶ岨道をゆっくり進む。駅から離れるにつれ、人の姿も見かけなくなってきた。マイナスイオンを浴びながらのそぞろ歩きに心が癒される。

「右の道はハイキングコースではありません。左の下り坂のほうへお進み下さい」

こんな立て看板がところどころに出ていたりしてなんだかとても親切だ。随時マップでも確認しつつ歩を進めていけば迷わずに済む。

見晴らしのいい高台に、木で設えられたベンチがポツンと置かれていたので、お弁当を食べていくことにした。なんてことはない普通のおにぎりや唐揚げも、自然の中でいただくと何割増しにも美味しく感じられる。