昔は新聞にもマル「。」がなかった!

そもそも、日本での句読点の使用に関するルールは歴史が浅く、現行の句読法は明治20年代以降に、西洋の影響で用いられるようになりました。

明治20年代以降に用いられるようになったといっても、分野や書物によって、かなり遅れているものもあります。井上ひさし氏は『私家版 日本語文法』で、日本での句点と読点について興味深く語っていますが「新聞が句読点の全面実施に踏み切るのは、昭和二十五年以降のこと」だそうです。

例えば、1950年の読売新聞はこんな感じでした。

▲文末に句点が付いていない 出典:読売新聞(1950年11月28日朝刊 3面)

読点「、」の方は、長文を区切るのに活用されていますが、文末の句点は付いていませんね。

そもそも、句読点が導入されたのは「誰でも読めるような、分かりやすい文章にしよう」という発想からでした。ですので、戦前ぐらいまでは、手紙などで句読点を使うのは子ども向けなもの、特に目上の人に対して使うのは失礼とされていました。この慣習は、今でも賞状や年賀状に受け継がれていると言えます。誰かに敬意を込める文章では句点をつけないのがマナーとされているのです。ちなみに筆者は、そんな慣習はつゆ知らず、年賀状に毎年マル「。」を真面目につけてきました😅

▲年賀状 イメージ:PIXTA

少なくとも戦前までは、句読点をつけない方が多かったことが分かりましたが、現在は句読点のつけ方はどう決められているのでしょうか。

現行の句読法は「くぎり符号の使ひ方〈句読法〉(案)」(1946年3月 文部省国語調査室)に基づいていますが、この案のまえがきには、こんな説明がありました。

「くぎり符号の適用は一種の修辞でもあるから、文の論理的なすぢみちを乱さない範囲内で自由に加減し、あるひはこの案を参考として更に他の符号を使つてもよい」
[出典:https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/sanko/pdf/kugiri.pdf]

つまり、この「くぎり符号の使ひ方」は一つの案にすぎず、正書法として確立していないとも言えます。井上ひさしの言葉を借りると「句読点に関するはっきりした約束事は、現在でも存在しておらず、したがって句点と読点の使い方は各人各様、日本人の数だけ規則がある、といってもいいぐらいである」ということなのです。

日本の正書法は本当に緩やかですね!  私の母国語のロシア語なんかは、正書法が厳しくて、句読点に関して細かいルールが決まっています。句読点を打ち忘れたり、打つ箇所を間違ったりすると、ミスと判断されてしまいます。

絶対的なルールを設けず、場面に合わせて細かく使い分けるのは、日本らしいところですね。

日本での句点について、ざっと見てきました。LINEに限らず、年賀状や漫画、小説など、句点が使われない場面はいくらでもあることが分かりました。歴史を振り返っても、最近の若者がLINEなどのチャットアプリでマル「。」を使わないのは、そんなに珍しいことではないように思えてきましたが、いかがでしょうか?