「絵文字進化論」の第3回では、絵文字がコロナウイルスの状況や予防法をわかりやすく伝えている事例を紹介しました。中には絵文字本来の意味を越えた使われ方をしているものも。例えば、💪という絵文字は、本来は「頑張る」という意味ですが、くしゃみ顔🤧+💪で、「ひじの裏側にくしゃみをしなさい」という使われ方をしていました。

コロナウイルスの例に限らず、絵文字の使い方・捉え方が社会的文脈や使い手によって、大きく形を変えることは珍しくありません。今回はこうした国や集団によって生まれる絵文字の使い方・解釈の違いについて見ていきます。

 🙆はOKじゃなくてOMG? 

例えば、この絵文字「🙆」みなさんなら何と読みますか?

ユニコードでは「OKのポーズをする人」(Face with Ok Gesture)と呼ばれていて、両手を頭の上で合わせて大きな丸を作ったポーズを表しています。日本では、「OK」「いいよ」「了解」といった意味で使われていますね。

ところが、海外では全く違う使われ方をしているのです。下記のツイートをご覧ください。

▲図1 ツイッターにおける「OMG 🙆」の使用例

両手で頭をかかえるポーズに見えるため、驚きや感動を表す絵文字としてよく使われているのです。

ツイートを検索すると「OMG」+「 🙆」という組み合わせがよくヒットします。OMGは英語の「Oh my god!」の略で「なんてことだ!」のような意味を表しています。

また「🙆」+「 yay」というのもよく見かけます。「Yay」は何か嬉しい・喜ばしいことがあって、「やった!」というニュアンスで使われている英語です。

▲図2 ツイッターにおける「🙆 yay」の使用例

このように、海外では🙆の絵文字は、OKポーズとしてはあまり認識されません。その理由はジェスチャー文化の違いにあります。日本ではお馴染みの丸ポーズですが、実は他の国では使われないようです。日本では学校のテストで正解に「◯」印、不正解に「×」印を付ける文化があって、それがOKポーズ🙆とNOポーズ🙅のように、体の動作としても定着しました。

ところが、笹原宏之先生の著書『漢字の現在―リアルな文字生活と日本語』(三省堂:刊)の記述(p161-170)によると、正解に〇を付ける文化があるのは日本と韓国ぐらいなんだそう。アメリカと中国では✔が、ベトナムでは「v」や「đ」のような略語が使われたりして、テストの採点記号というものは国によってバラバラなのです。

ちなみに、筆者の母国ロシアでは、正解は「+」で不正解はマイナス「-」が主流です。日本的な感覚だと、「+」はどちらかというと「×」に近いでしょうか? ロシアでは、ミスのあった箇所を〇で囲んで目立たせることもよくあります。

ほかに🙏という絵文字も使用のバリエーションが多くあります。

日本だけでも「ありがとう」「ごめん」「お願い」「いただきます」など様々な使われ方をしますが、海外では「ナマステ」や「お祈り」から「ハイタッチ」といった使われ方をする。本当に解釈の幅が広いですね。