株価さえも自由に“操作”できる共産党
全体主義国家・中国の“強み”は、緊急事態時の経済でも発揮されます。日本やアメリカなど、一般的な資本主義・民主主義国家の場合、たとえ緊急事態時でも国民の自由と人権に最大限配慮しなければならないので、新型コロナウイルスの感染拡大のような緊急事態時にはヒトが動けず、生産も止めざるを得なくなります。
しかし、中国では2020年1月23日以降、武漢市が都市封鎖(ロックダウン)されていた時でさえ、共産党政権が戦略的に重要だとみなす産業、たとえば半導体などは党からの指令で生産が続けられていました。
当時武漢市にある国策半導体メーカー・紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC)の工場は、都市封鎖中も例外として1日も休まず稼働していたと言われています。
共産党が独裁によって、情報・おカネ・ヒトの動きをことごとく統制している全体主義国家だからこそできることです。
資本主義国家と同じ感覚で、中国という国をとらえることはできません。国民の人権や自由よりも、国家の利益を優先することのモラルの問題はさておき、緊急事態時でも強引に生産活動を続けられるのは、やはり資本主義国家にはない“強み”だと言えます。
その“強み”は、株価にも象徴的に表れています。中国共産党のような独裁政権が、ヒトとおカネと情報をコントロールすると、株価にどのような影響を与えるでしょうか。株価でさえも人為的に操作できるようになります。
ニューヨーク市場のダウ平均株価は、コロナショックをきっかけに大暴落しました。それに対し、上海総合指数(上海証券取引所における株価指数)は底が堅く、ニューヨーク市場の影響を受けても、1割程度しか下がっていません。
中国では、共産党にとって都合の悪いことを新聞記者や評論家などが書いたり発言したりすれば、ただちに捕捉・逮捕・監禁されてしまいます。そのように何もものが言えない社会で、株価や相場が資本主義社会のように市場の需要・供給の関係で決まるというのはありえない話です。
全体主義社会では、市場を動かす情報とおカネ、さらにヒトの流れを独裁政権がうまくバランスを取りながらコントロールすれば、経済の安定を“演出”できます。コロナショックによる供給面・生産面・消費面での大幅なマイナス成長にもかかわらず、中国の株価が比較的安定しているのは、そういう背景を見ないとわかりません。
※本記事は、田村秀男:著『景気回復こそが国守り 脱中国、消費税減税で日本再興』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。