経済協力とセットになるチャイナリスク

アフターコロナの世界で「脱中国」が大きな課題になるのは、医薬品や電子部品などのモノに関する分野に限った話ではありません。一帯一路をはじめ、中国が仕掛けてくる投資プロジェクトについても注意深く見直す必要があります。

次のグラフは国別のコロナの感染者数と、中国による経済合作の関連性を表しています。中国総務省発表の経済合作に関する統計データを拾い出してグラフ化し、各国の新型コロナウイルスの感染者数のグラフと重ねてみました。

▲グラフ:新型コロナウイルス感染者数と中国の経済合作

このグラフを見ると、やはり経済合作の規模と感染者数は比例する傾向がみられます。感染者数が世界一のアメリカは、一帯一路にこそ参加していませんが、経済合作の規模が他国に比べてダントツに大きいのです。

誤解してほしくないのですが、私は別に「経済合作で中国人労働者を受け入れたから感染者が増えたのだ」と主張したいわけではありません。経済合作を積極的に受け入れているということは、それだけ中国経済と一体化する――ヒトの面も含めて中国がもたらすさまざまなリスクとも一体化する、ということを訴えたいのです。

▲経済協力とセットになるチャイナ・リスク イメージ:PIXTA

日本も含め世界の国々は、中国と経済相互依存になっていくことの危険性を、コロナショックの教訓として受け止めるべきでしょう。もっとはっきり言うなら、財政の緊縮をやめ、中国の企業やヒトにインフラを頼らないことです。

安倍政権はコロナショックへの緊急経済対策のなかで、日本企業の中国からの本国回帰を支援することにしました。今後はモノに限らず、おカネもヒトも脱中国を図るべきです。

そのために必要なのは、内需を破壊する根本問題である緊縮財政と増税と決別する必要があります。一時的な緊急経済対策で終わらせてはいけません。

中国が緊急事態時でもヒトやおカネ、情報を自由にコントロールできるという、ある意味で資本主義社会と比べて有利な立場にあるのは間違いありません。しかし、一方で、香港問題ではその強引さゆえに国際社会から激しい非難を浴びせられています。このままでは“焼け太り”どころか、中国経済の生命線である香港の国際金融センターとしての機能まで失ってしまうかもしれません。

この先、中国が破滅の道を歩むのか、“焼け太り”を成功させて世界に覇を唱えるのかは、まだまだ予断を許さない状況にありますが、いずれにせよ日本のやるべきことは決まっています。

日本経済を完全に復活させることです。もちろん、コロナ以前の状態に戻すという意味ではありません。コロナショックをきっかけに、これまでの間違った経済政策(緊縮財政・増税路線)を改めてデフレを脱却し、着実に経済成長の道を歩むということです。

いくら政府が日本企業に「中国への投資をやめて日本国内に戻ってきてください」と呼びかけたところで、企業は収益志向なので“儲からない”ところにはなかなか投資はしません。それが日本の「脱中国」における非常に大事なポイントです。

日本の経済が依然として低迷し続けるようでは、日本の企業が中国を引き揚げて国内に投資することはできません。これは動かしようのない経済の原則です。日本の「脱中国」には、日本経済の復活が不可欠なのです。

※本記事は、田村秀男:著『景気回復こそが国守り 脱中国、消費税減税で日本再興』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。