水中でも噛み続けるヘビの執着心

実は僕、クマとヘビにも噛まれたことがあります。僕を噛んだクマは、お母さんを殺されて保護されてきたツキノワグマ2頭。生後2ヶ月で体重2kgの小さな小さなメスクマでした。

名前を「テツ」と「ミヤ」と名付け、僕が母親の代わりに育てていました。ミルクは犬用、哺乳瓶は人用を使うと、母親のおっぱいとはほど遠い「味」と「乳首」を嫌がり、哺乳のたびに大暴れする2頭。

▲クマは鋭い爪を持っているのです イメージ:PIXTA

彼女らは、小さな赤ちゃんなのに“鋭い爪”と“犬歯”を持っていたため、僕の腕から脇腹まであっという間に傷だらけになりました。

当然痛いのですが、どんなに噛まれ引っ掻かれても「つぶらな瞳」と「フカフカの毛」。そして「胸にある小さな月の輪の模様」にメロメロでした。小さなクマでもあんなに痛いのだから、大人のクマに噛まれたら…。想像するだけで恐ろしい。

一方、僕を噛んだヘビは、体長1m30cmのカリフォルニアキングスネークの「ジャム」。彼はダイエット中でお腹を空かしていました。それなのに、僕は不用意にいつものように飼育ケースの中に手を入れてしまったのです。

ジャムは丸めていた体を、ものすごい速さで伸ばし僕の手をガブリ。あわてて飼育ケースから手を引き出そうとしましたが、手の平の柔らかいところに噛みついたまま決して離そうとせず、ケースから出した僕の手にくっついてきました。

ジャムを引っ張ってみますが、牙がより一層深く食い込み、痛さが倍増。ヘビは噛みつくとなかなか離しません。それどころか今度は僕の手首に巻きつき、手首をギューっと絞め始めました。

「ジャム君、僕は絶対食べられる大きさじゃないよ!」

ジャムには申し訳ないのですが、洗面器に水をため、その中に手とジャムを入れます。窒息作戦です。水はみるみるうちに、僕の血で真っ赤に染まりました。真っ赤な水と手とヘビ……。まるで「恐怖映画の一場面」のような絵面でした。

ジャムはなかなか口を開かず、3分以上水の中に入れることになりました。その間も細く尖った歯は深く食い込んでいき、とっても痛かったです……。

▲ヘビも鋭利な牙をもっているんです イメージ:PIXTA

僕からのアドバイス。空腹時のヘビには決して近づかないこと。また、もしヘビに噛まれたら、引き抜こうとするといっそう強く噛むので、できるだけそっとしたまま、水の中にヘビごと入れると効果的です。毒ヘビの場合は、すぐお医者さんに行きましょう。

ケースに入れ、たっぷりの餌をあげた後、落ち着いたジャムを抱き上げてハンドリング(手に乗せて遊ぶ)を楽しみました。どんな生き物でも、お腹がすいているとイライラしています。ダイエット中の生き物(人)にはあまり近づかない、これが一番。

話は変わって最初のモモコに。治療を終えてからおじさんから衝撃の一言が。

「この子、抱っこ嫌いなんだよな」……早く言ってよ! ちなみにおじさん! “モモコ”ではなく“モモオ”ですよ。大きなタマタマありますよ、男の子です。

さて、いかがだったでしょうか。動物が噛むのには、こちらのことを敵だと思ったり、イライラしている時だったり、いろいろな理由があるんです。

動物を飼われていて噛まれるのに困っている方は、動物がいまどんな状態かを、しっかりと見ながら接してあげると良いかもしれません。

今回はこのあたりで。また次回お会いしましょう。

「スーパー獣医 Dr.北澤のどうぶつ事件簿」は、次回11月10日(火)更新予定です。お楽しみに!!


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