廃棄が出ると加盟店“だけ”が損をする
ここがコンビニ会計の特徴でもあり、恐ろしいところである。すでに述べた通り、コンビニ会計は、売れていない商品の原価を粗利に含ませず計算をし、廃棄ロスを加盟店に負担させている。
これが意味するところは、本部は廃棄ロスを負担しない、ということだけではなく、商品が一つでも売れれば、利益が膨らむということである。
本部の方は、廃棄は怖くないし、少しでも売れたら利益となる。そうなると、本部は加盟店で発生する売れ残りを気にせず、少しでも多くの商品が売れるように、加盟店に商品の発注を大量にするように求めるようになる。
たとえ10個商品を仕入れて1個しか売れなかったとしても、本部は痛くもかゆくもなく、1個売れたためにロイヤルティ収入を得られる。一方で、9個の廃棄ロスを抱えることになった加盟店は大損になる。
このコンビニ会計のために、本部は自らの利益を優先し、売れ残るほどの商品の発注を加盟店に求めるようになる一方で、加盟店は廃棄ロスに苦しむことになってしまっている。
コンビニ会計は、本部と加盟店の利害が一致しないという問題を引き起こしているのである。加盟店が儲かるから本部も儲かる、という共存共栄の理念に反しているのだ。
このコンビニ会計の恐ろしさを、もう一つ具体例を用いて解説したい。原価70円のおにぎりを6個仕入れて1個100円で6個完売したとする(ロイヤルティは同じく60%)。
3.おにぎりを6個仕入れて完売した場合
売上:100個×6個=600円
原価:70円×6個=420円
粗利:600円−420円=180円
ロイヤルティ:108円
加盟店の収益:72円
先ほどの〈2.おにぎりを10個仕入れて2個売れ残った場合〉と比べてほしい。6個のおにぎりを完売した場合の本部のロイヤルティ収入は108円、おにぎりを10個仕入れて2個売れ残った場合のロイヤルティ収入は144円である。
食品の売れ残りが大量に発生している
先ほど述べた通り、これが意味することは、本部はどれだけ売れ残りが出ようが、少しでも多く売れた方が儲かる、というシステムになっていることを意味する。
このため、本部は「廃棄ロスが出ないように売り切る」ことを考えなくなり「少しでも多く売る」ということ“だけ”を考えてしまうようになるのである。
一方で加盟店は、6個おにぎりを仕入れて完売する方が、10 個おにぎりを仕入れて8個売れる(すなわち、2個廃棄する)より儲かる。加盟店は6個のおにぎりを完売した場合の収益は72円であるが、10個おにぎりを仕入れて8個売れる(すなわち、2個廃棄する)場合の収益はマイナス44円である。
加盟店は売れ残りを出さずに売り切った方が儲かるから、8個のおにぎりを売るために2個売れ残りを出すよりも、6個のおにぎりを完売したいのである。
こうした本部と加盟店の利害の不一致が、加盟店と本部の間に軋轢を生じさせてしまっている。
結局、力の強い本部は、完売を求める加盟店の願いを無視して、大量発注をするように加盟店に仕向けるようになる。この結果、加盟店は廃棄ロスに苦しみ、本部に対して不満を持つようになる。
そして、この独特の会計方法は、さらに重大な問題を引き起こしている。それは、本部が加盟店に大量発注をするように仕向けた結果、食品の売れ残りが大量に発生している。このため、膨大な食品ロスを生んでいるのである。
もっとも、廃棄を出す方が儲かるというロイヤルティ算出方式に批判が多かったため、コンビニ各社は廃棄ロス助成金制度を設けている。セブンイレブンの場合、廃棄ロスの15%を本部が負担するという方式である。
原価70円のおにぎりを10個仕入れて1個100円で8個売れたとするという事例で、このセブンイレブンの計算方式に従うと、本部の収益は123円、加盟店の収益はマイナス23円という結果になる。
廃棄ロス助成金制度によって、本部の収益は廃棄の15%分だけ減るが、加盟店は赤字のままである。助成金制度があっても、廃棄が加盟店にとっての痛手になっていることは変わらないのである。