今回の新型コロナウイルスのように、薬に頼ることが難しいウイルスに対しては、自分の免疫力を高めてウイルスがもたらす病気にかからないカラダをつくること大事です。しかし現代社会で育っている子どもたちは、雑菌から守られ過ぎたことで免疫力が弱くなっていると星子直美医師は警鐘を鳴らします。

※本記事は、星子尚美:著『腸のことだけ考える』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

脳梗塞や心筋梗塞も「腸の汚れ」から生まれる

厚労省の人口動態統計(2018年)によると、日本人の死因の1位は悪性新生物、つまり“がん”です。2位が心臓疾患、3位が脳血管疾患、4位が肺炎です(※老衰を除く)。

がんは1981年以来、独走の1位。今後も当分変わりそうにありません。2位の心臓疾患と3位の脳血管疾患は、心臓と脳という別々の臓器ではありますが、ともに血管の病気であり、動脈硬化によって発症します。この2つを合わせると死因は、がんとほぼ同数です。

脳や心臓の動脈硬化とは、脳卒中や心筋梗塞などのことです。若い頃の血管は、しなやかで伸縮しやすく、心臓から押し出される血液を全身の細胞にスムーズに運びます。そこには酸素や栄養分がたっぷり含まれていて、細胞の新陳代謝が行われます。しかし40 代から50 代になると、血管の内側にはコレステロールや中性脂肪などがたまり、血管内部が狭くなります。

▲脳梗塞や心筋梗塞も「腸の汚れ」から生まれる イメージ:PIXTA

コレステロールは脂質の一種で、本来は細胞の材料になる物質です。しかし量が多すぎると、血管壁にこびりついたり潜り込んだりして血管を傷つけます。また活性酸素によって酸化し、過酸化脂質となって血管を劣化させていきます。こうして血管は、次第に硬くてゴワゴワした状態になり、血栓をつくったり、破れたりしてきます。これが動脈硬化です。

動脈硬化が脳で起これば脳梗塞に、心臓で起これば心筋梗塞になります。最近は健康診断で、早い時期から初期の動脈硬化の診断がなされるようになりました。しかし、それでも脳梗塞や心筋梗塞の死者は減っていません。

それは、やはり動物性の脂質をたくさん摂るようになり、食物繊維の多い日本食を食べなくなったこと、つまり腸内環境が悪くなっているのが大きな原因と考えられています。加えて喫煙・不規則な生活・ストレス・運動不足などで活性酸素が大量に発生し、腸内細菌のバランスも悪くなっているからです。

腸内環境が悪化すると、悪玉菌が生成する有害物質や、本来は腸にしかいないはずの腸内細菌が血管に漏れ、慢性的な炎症を引き起こします。それもまた動脈硬化の原因になります