「歯間ブラシやフロスを使いましょう」「キシリトールガムを噛むのが高価的」「フッ素入り歯磨き粉がオススメ」などなど、歯のケアに関してさまざまな情報が発信されています。歯科医師・ほりうちけいすけ氏によれば、どれも間違いではないのですが、歯を守るためにもっとも重要なのは「適切な歯磨き」だと言います。次々と出てくるインパクトのある情報に惑わされず、意識した「適切な歯磨き」を心がけましょう!

※本記事は、ほりうちけいすけ:著『歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

“間違ってはいない”歯に関するたくさんの情報

ご年配の方はご存知かもしれませんが昔、3-3-3運動というのがありました。1日3回、食後3分以内に、3分間歯を磨きましょうという運動です。

当時、私は小学生でしたが、そんなことをしている大人を見たことがありませんでした。実現不可能なスローガンってよくあることです。

ところが最近では、食後30分以内に歯を磨いてはいけない、という意見も出ているようです。

理由として、食後は唾液が酸性になることによって歯が溶けやすくなるので、唾液が中性に戻るのを待ってから磨きましょう、ということらしいです(いくら酸性になっても歯を磨くことによって影響が出るほど溶けません)。

また、予防的にキシリトールガムを噛みましょう、フッ素を塗りましょう、歯間ブラシやフロスを使いましょう、電動・音波歯ブラシがお勧めです、などなど……。

こうなると何が正しくて、何が間違っているのか分からなくなりますね。

▲“間違ってはいない”歯に関するたくさんの情報 イメージ:PIXTA

実はすべて間違いではありません。間違ってはいないのですが、すべて枝葉の要素なのです。言い換えると、間違ってはいないけど、半分どっちでも良いことなのです。

大事な幹の部分は何かというと、適切な磨き方と、歯への力のかけ方なのです。重要な幹の部分を改善せずに枝葉の部分だけを推奨しても、あまり効果がないことは容易に理解できますね。

それなら、なぜ幹の部分が広まらずに、枝葉の部分だけが広まるのでしょうか?

インパクトだけに引っ張られてはダメ

理由は2つ考えられます。

ひとつは商品になるか、ならないかです。歯間ブラシもフロスも電動歯ブラシもキシリトールもフッ素も、予防的には決してマイナスではありません。

データは出ているので効果はそれなりにはありますが、やはり商品です。商品である以上、作った者の立場からすれば売らなくてはいけません。売るためには、やはり効果をアピールする必要があるのです。

もうひとつは、これら枝葉の要素は説明するのが簡単であり、わかりやすく、それなりのインパクトがあるからです。

「歯間ブラシやフロスを使いましょう」
「キシリトールガムを1日2回噛みましょう」
「1日3回、食後3分以内に、3分間歯を磨きましょう」
「フッ素入りの歯磨き剤を使いましょう」

ねっ、簡単でしょう? そしてインパクトです。

「え~、食後30分以内に歯を磨いてはいけないんだって!」いかにもマスコミに好まれそうなフレーズですね。

▲インパクトだけに引っ張られてはダメ イメージ:PIXTA

くどいようですが、これらを否定しているわけではありません。

個人的な観点からですが、自分自身、歯間ブラシは使いませんが、フロスはときどき使っています。

ただ、歯間ブラシでも、フロスでも適切に使おうと思ったら意外と難しくて、コツがいります。電動や音波歯ブラシでも安いものなら千円未満、高いものでは3万円くらいまであります。

どれが良いのかもわかりません。昔1万5千円ほどの超音波歯ブラシをもらったので、使ったことがありますが長続きしませんでした。一番大きな理由は毛先がダメになったとき、スペアがいつまでも売ってないことです。

また器械である以上は壊れます。そうなったときに、また新たに買うのが面倒なことも理由です。このように、枝葉の要素もつきつめていくと複雑なことが多々あります。それでも、取っ掛かりだけはシンプルに表現できるのです。