気になる「特養」にかかる費用の相場

お金の損得を計算したうえで、親の入院のタイミングをはかるものではないだろうけど、あとになって、おのれの無知を知った次第だ。ネットで調べてみたら、この「月またぎの入院は損」という医療知識は、出産の時に知る人が多いみたいである。

ああ、こんなところにも、妻や子供を持ったことがないロンリー独身男のハンデがあったとは!

それにしても、どれだけ医療費がかかっても月4万円台で済むのは、驚きでしかなかった。おまけに、うちの両親は教職員の共済組合に加入していて、ここからも後日、お金が支給された。

至れり尽くせりの保険制度、医療制度のありがたみを知ると同時に、いくらなんでも手厚すぎるんじゃないか、国に負担させすぎじゃないかと思わなくもなかった。が、そこはぼく個人が、今まで支払ってきたバカ高い健康保険の納付金が使われているのだろうと、納得することにした。

自由業者の健康保険料は高い。医者にかかったこともないのに、何十年も納めてきた健康保険や介護保険のお金は、自分の親が病気になったときのために積み立てられていたのだ。そう考えれば割り切れる。

お金の話ついでに、よく質問される特養の費用についても記しておこう。「特養に入るにはどのくらいのお金がかかるんですか」という質問は本当に多い。

▲介護にかかるお金の実際は? イラスト:トキワセイイチ

特別養護老人ホームの料金は、平成27年8月に大きな改定がされて、所得や資産に応じた負担軽減制の基準が変わった。

ざっくり言うと、それ以前は「そこそこ所得のある世帯以外は負担軽減されて安かった」のが、改定後は「少しでも所得のある世帯は負担軽減してもらえなくなったため、以前ほど安くない」に変わった。

具体的な金額は、専門のサイトを調べるか、ご自身の市町村やお近くの特養にお尋ねください、という役に立たない話しか書けない。

しかし、こんな答えをすると「いや、正確な金額や仕組みを聞きたいわけじゃなくて、いつかの将来のために、おおまかな目安を知りたいだけです」と食い下がられる。

父が入所した特養を例に、だいたいの金額を記しておこう。

居住費+食費+介護サービス利用料。これが特養の費用の基本的な内訳だ。民間の有料老人ホームと違って、入所費や保証金は必要ない。

  • 所得の少ない人は、月額合計が6万円から9万円くらい。
  • それ以外の人は、月額合計が15万円から18万円くらい。

現時点では、ざっとこのくらいの相場だろうか。要介護度が変われば、料金も数千円の範囲で変わる。部屋が立派な個室なのか、相部屋なのかという違いによっても、料金は変わる。

うむ。こんなガイドブックみたいな話は、退屈で面白くないですかね。

こうして「月またぎの入院をして損した!」などとセコい反省をしていたら、母の身に、もっと深刻な診断がくだされることになった。

※本記事は、note連載「介護幸福論」『「月またぎ入院」はダメ!知らないと損する医療費のお話』回より一部を抜粋編集したものです。


独身中年息子による介護奮闘記。BEST T!MESでも好評を博した「母への詫び状」が、ペンネームだった著者が実名を明らかにし、「介護幸福論」として再スタート。著者は“王様”として業界に名を轟かす競馬ライターの田端到さん。記憶の糸をたどりながら6年間の日々、そこで見つけた“小さな幸せ”を綴っていきます。