ポジティブな思考で活性するNK細胞」

心のあり方が、免疫力の強弱に深くかかわっています。何ごともポジティブにとらえて希望や夢を持って生きる人は、交感神経と副交感神経のバランスをとるのも上手で、免疫力も増強されます。

心のあり方にもっとも影響されやすいのは、NK細胞です。笑えばNK細胞の活性は上昇し、落ち込むと低下するという具合に、NK細胞はメンタルの影響をもっとも受けやすい免疫細胞です。

生きがいがあって楽しくイキイキとした生活は、NK細胞の活性を高めます。反対に、イヤイヤものごとにあたったり、暗い気持ちでいたり、他者に不満を抱えていたりすると、NK細胞の活性を失います。NK細胞の活性が落ちると風邪などの感染症にかかりやすく、がんにもなりやすくなります。

では、心の変化は、どのようにNK細胞の活性に影響を与えるのでしょうか。

私たちは日常生活のなかで、何事においても「好き」と「嫌い」を無意識に判断しています。この心や感情の変化が間脳という脳の一部に伝わると、間脳の働きが活発になり、神経ペプチドという物質がつくり出されます。

神経ペプチドは、まるで感情を持っているかのように働きます。情報の内容を判断し、その判断によって自らの性質を変えるのです。たとえば「好き」「楽しい」と感じたときには善玉ペプチドとなって全身に流れ、NK細胞を活性化させます。反対に「嫌い」「怖い」「つまらない」「ストレスがつらい」と感じたときには悪玉ペプチドとなって、NK細胞の働きを低下させるのです。

だからこそ、何ごともよい方向にとらえて、ポジティブな思考を心がけることが重要です。「好き」「楽しい」と感じるものに、どんどんチャレンジするのもよいことです。また、ストイックになりすぎず、お酒もほどほどに飲んで、大変な状況下でも努めて陽気に楽しく暮らせる人のほうが、NK細胞の働きをよくできることがわかっています。

▲ポジティブな思考で活性する「NK細胞」 イメージ:PIXTA

「1時間笑う」ことが免疫力アップのコツ

アメリカのジャーナリストであるN・カズンズ氏は『笑いと治癒力』(岩波現代文庫)という著書のなかで「笑いは感性のプログラムを活性化し、治癒力を高める」と語っています。笑いは自律神経を介して、心と身体のプログラムを活性化させるというのです。

「笑う」ことでNK細胞を活性化させるというデータも、これまで多く報告されています。L・ベーク博士は、健康な医学生52人を対象に、1時間のコメディビデオを鑑賞させ、その前後の免疫力を測定しました。

結果、NK細胞の活性も、抗体の量もそれぞれ増加し、その効果はビデオ鑑賞後12時間以上も続いたということです。なお、笑うと活性化するのはNK細胞ばかりではありません。他の免疫システムもおしなべて活性化することがわかっています。

「笑う」と免疫力が高まるという研究は、他にも多くあります。ほとんどが1時間笑うというものでした。ところが「3時間笑う」という実験になると、逆に免疫力が低下したケースも見られました。免疫力を高めるには、1時間程度笑うのがよいようです。

ところが大人は、ほどほどに笑うことも忘れがちです。人間の子どもは1日に300回も笑うそうですが、大人になるとわずか17回です。笑うことほど簡単で楽しい健康法はないのに、もったいないことです。親しい人と楽しく談笑するだけでも、私たちの免疫力は高まります。好きなお笑い動画などを見るのもよいことです。

さらに、笑いながら食事をすると、やせやすいことがわかっています。「『おいしい』と感じながら食べること」「大好きな人と食べること」「ニコニコ笑って食べること」の3つを守って食べていると、その献立が持つエネルギー以上の熱を身体は消費し始めるというのです。

いつもニコニコ笑っているだけで、免疫力が上がってダイエットもできるのですから、笑いの効用とは笑っちゃうほど簡単に得られる、というものです。