こんにちは。獣医師の北澤功です。みなさんは子どもの頃、動物と触れ合う機会はありましたか? 僕の病院の近くの小学校には、子どもたちの登校を見守る柴犬の人気モノがいました。今回は、そんな柴犬の物語です。

小学生の登校を見守るみんなのアイドル・シバちゃん

「おはよう!」
「おはようございます!」

平日の朝8時、小学校の校門の前を通ると、先生と元気いっぱいの小学生たちが交わす、あいさつが響いていました。

ほほ笑ましい光景に目を向けると、先生の横には、飼い主さんと並んで、ふかふかの尻尾をフリフリする柴犬の“シバタロウ”がいました。子どもたちは「シバちゃん、おはよう!!」とシバタロウにもあいさつをしながら、それぞれ好きなところをなでます。

シバちゃんと僕の出会いは、開院したての頃にさかのぼります。混合ワクチンの接種が始まりでした。まだ若く元気いっぱいのシバちゃんは、人が大好き。愛嬌があるからみんなに愛され、診察のために病院に来ると、いつも人に囲まれていました。

そんなシバちゃんも、10歳をこえると体のあちこちが弱りはじめ、開腹手術をするなど大病の連続。もうダメかな、と思われることが何度もありました。ですが、飼い主さんの献身的なお世話のおかげで、元気に復活したのです。

病気が治り元気になると、学校でのあいさつが始まりました。飼い主さんの散歩コースに学校があり、最初は通学途中の子供たちに頭を撫でてもらうだけでしたが、そのうち校門でのお迎えが日課となりました。

シバちゃんは学校で一番の人気者。運動会・卒業式には来賓として呼ばれるほど学校になくてはならない存在に。子どもたちには決して怒らないのですが、何回も痛いことをした僕にだけは「ウゥー」と怒り声で威嚇してきます。

そんなシバちゃんも、15才をこえた2019年の夏くらいから、全体的に白い毛が混ざりはじめ、腰も曲がり、目も白く濁っていました。心臓の病気も患い、少し歩くと疲れてしまうようになり、入退院を繰り返すように……。

それでも、退院すると暑い日も寒い日も雨の日も、校門でのあいさつを欠かしませんでした。診察のときは寝てばかりでヨタヨタなのに、小学生の前ではシャッキと立ち上がり、みんなのあいさつに応えていました。

▲子どもたちと触れ合うことが大好きでした イメージ:PIXTA