「発見」した悩みや不満を「解決」する道具
新しいビジネスは、実は今あるものを組み合わせて創出されるものです。ゼロから何かを生み出すという技術やアイデアからの新ビジネスは、きっとこの先も創出されないでしょう。新しいビジネスは、今あるアイデアにほんの少しのスパイスをかけて、ビジネスモデル化されているのです。
では、どういう組み合わせで新しいビジネスを創造したらいいのか。アニメ『ドラえもん』を例に考えてみたいと思います。
のび太がドラえもんの道具を必要とするのは、ジャイアンに殴られたり、テストの点数が悪かったりと、何かしらの問題が生じたときで、それを解決するための道具が、ドラえもんの四次元ポケットから取り出されたはずです。
そして道具は、のび太の「こういうふうにしたい」という“願望”をストレートに叶えるものではなく、“改善”のためのソリューションとして道具が与えられることのほうが多かったはずです。
例えば、ひみつ道具の「アンキパン」は、見た目は普通の食パンであるアンキパンを、ノートや本のページに押しつけるとそのページが写され、その食パンを食べると写された内容を確実に暗記できるというアイテムです。
アンキパンを食べたから教科書をすべて暗記できるのではなく、パン1枚につき約1ページしか暗記できないという制限がある中で、自ら願望を叶えるべく奮闘します。
つまり、ドラえもんは最初から結果が出る道具を与えるのではなく、結果を出すための道具をのび太に与えているのです。このストーリーでは、アンキパンのほかにも食事を食べ過ぎたことで腹を下し、テストの朝になってもう一度最初のページからアンキパンを食べ直すハメになる、というオチで終わります。
この物語とドラえもんのひみつ道具から察するに、誰もが悩みや不満、問題を抱えているなかで求めているのは、その問題を解決に導くための道具です。
私はその道具を開発することが、あるいは発見することが、新たなビジネスの着眼点であり、チャンスだと考えます。
現に、人々の問題から生まれた大ヒット商品に、パナソニック(松下電器産業)の「二股ソケット」があります。
二股ソケットとは、電球を挿すソケットが2つある照明器具です。大正時代は天井からぶら下がったソケットのみが電気の供給源だったため、そこに二股ソケットを付けて、片方にソケットからコンセントに変換するアタッチメントを装着することで、照明と他の電気製品が同時に使えるようになりました。
この二股ソケットの事例のように、不便に思ったことを解決するテクノロジーは、必ず重宝されます。
ですから、新ビジネスを創出したいのであれば、あなたも今ある世間の悩みの数々に着目し、あるものとあるものを組み合わせたり、足して2で割ってみたりしながら、創造してみてはいかがでしょうか。