生き残りをかけて戦う中小飲食店
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、飲食店は営業スタイルの変化をかつてないスピード感で迫られています。大きな変化の一つに、ウーバーイーツによるデリバリーサービスの導入があるのではないでしょうか。
飲食店側は大まかに言うと、以下のような流れを経て、登録作業を進めます。
- ウーバーイーツに加入申請をして、専用のタブレットを受け取る
- 店紹介のアピールコメントや、商品画像、価格の設定、商品代金の振込先銀行口座の登録などを行う
- テイクアウト用の容器を準備する
というような段取りです。配達用のスタッフを募集したり、チラシを作ってデリバリー開始を周知することを考えたら、ウーバーイーツの導入は圧倒的にお手軽。
しかし、誰もがスマホを使って注文するアプリだからこそ生まれる新たな苦労もあります。今回はそんなお話しをしたいと思います。
私がその苦労に気がついたのは、配達員となってから半年ぐらいたった頃のことでした。ピコンと配達依頼を受け、新橋に向かう私。仮にこの店を「焼き鳥一筋 陽ちゃん新橋店」としましょう。
店の注意書きの部分を見てみると「お店の正式な名前は『居酒屋陽ちゃん』です」と一言添えてあるのでした。普段は焼き鳥がメインの居酒屋なのでしょうね、焼き鳥丼の香ばしい匂いがおいしそうでした。
そしてその数日後、今度は「本場博多の味 もつ鍋陽ちゃん新橋店」からの受け取り依頼が入ります。商品を受け取るため指示された場所に行ってみると、例の「居酒屋陽ちゃん」だったのです。
さらに別の日には「お魚ランチ 陽ちゃん弁当新橋店」に取りに行くと、またまた受け取り先は「居酒屋陽ちゃん」でした……。
なぜ料理ごとに店の名前を変えるのか? 実はここに、中小の飲食店の企業努力があるのです。
よくよく考えてみたら、ウーバーイーツで食べたい料理を探しているときに「居酒屋陽ちゃん」と書かれていても、私だったらまず間違いなくスルーします。居酒屋のランチは安いから食べるのであって、デリバリーするほどのものではありません。店側もそれがよくわかっているから、売りにしているメニューを店の名前に出すことで、注目を集めようとしたり「本場」といった言葉を使って付加価値をつけようとしているのです。
さすがに3回も同じ居酒屋から注文を受けた私は、そう推測するに至り、居酒屋陽ちゃんの店主にそれとなく聞いたところ「その通り」とのことでした。
実際の店舗の場合は、入り口に「もつ鍋やってます」と張り紙を出したり、焼き鳥の文字が入った赤ちょうちんを出したり、お昼には店の前にお弁当を並べるだけでいいのに、ウーバーイーツを始めるとなると、いろいろ苦労があるようです。