今の時代で考えられる“新しい”恐竜人間とは?
ラッセルが考えた恐竜人間は、体が鱗で覆われていた。それは、当時の恐竜についての考えを反映していたのだろう。しかし現在では、多くの恐竜に羽毛が生えていたと考えられている。
特に、鳥類型恐竜やその近縁種は、全身が羽毛で覆われていた可能性が高い。そのため、恐竜人間の体にも、羽毛を生やすのが適切だろう。
もしかしたら、私たちの体の毛が薄くなったように、恐竜人間の羽毛も薄くなっているかもしれないが、その場合でも体の表面に生えているのは羽毛であって、鱗ではないだろう。
さらに、ラッセルの恐竜人間は、私たちのように体が直立している。これも不自然だ。
私たち人類が直立二足歩行を始めたのは、化石の証拠から約700万年前と考えられる。いっぽう脳が大きくなり始めたのは、約250万年前のことだ。約700~250万年前には、チンパンジーぐらいの脳を持った、直立した人類が何種もいたのである。
つまり、すでに体を直立させている生物の一部が脳を大きくしただけであって、脳を大きくするために体を直立させたわけではない。脳を大きくするために直立二足歩行は必要ないかもしれない。
とはいえ、別の見方もある。たしかに人類は、脳を大きくするために体を直立させたのではないかもしれない。しかし、たまたま体が直立していたから脳が大きくなれたのだろう、という見方である。
さて、鳥類型恐竜の体は直立していない。それは化石からもわかるが、現在生きている鳥類型恐竜(=鳥)を見てもわかる。体はほぼ水平だ。足の真上の腰を支点として、頭部と尾部でバランスを取っているのだ。
おそらく鳥類型恐竜の脳が大きくなり、私たちの脳ぐらいの重さになっても、そのままの姿勢でバランスを取って支えることはできるだろう。それなら無理に恐竜人間を直立させる必要はない。
私たち人類の場合は、脳が大きくなる前から直立していたのだ。だから脳が大きくなったあとも、そのまま直立しているのだ。恐竜人間の場合は、もとは直立していなかったのだから、脳が大きくなったあとも、よく目にする鳥の姿勢のままで良いのではないだろうか。
鳥類型でも空は飛べなかったはず
とはいえ脳が大きくなれば、それに伴っていくつかの進化が起きることが予想できる。
たとえば、尾が大きくなるかもしれない。恐竜人間は腰の部分を支点にして、頭部と尾部でバランスを取っている。だから、もし頭部が重くなれば、尾部も重くしなければバランスが取れないだろう。
さらに、翼がなくなる可能性が高い。
鳥は飛行するために、体重が軽くなるような体の構造をしている。多くの骨が中空になっているのは、その例だ。アフリカオオノガンは、飛行できる鳥のなかで最も重く、20キログラムに近い個体もいるらしい。
とはいえ、ほとんどの鳥は大きくても10キログラム以下である。
そんな軽い体に、私たちぐらいの1キログラムを超える脳があったら飛ぶのは難しい。さらに脳が重くなるのに伴い尾も重くなるなら、なおさらだ。恐竜人間が空を飛ぶことは、まず無理だろう。