こんにちは。風の時代の風雲児、風野又二朗です。

4月になりました。花粉症の薬の副作用で眠いです。とにかく1日中眠いです。ただでさえ春は“春眠暁を覚えず”で眠いじゃないですか、なので風野は今、W睡魔と戦っております。もし今、何も考えずに寝て良いですよって言われたら、梅雨まで寝ちゃいそうですが。さ!!今、大きな声を出しました!目が覚めましたよ。今回も宜しくお願いします!

▲風をあつめて、巻き起こす

先日、とある公開中の映画の情報を聞いて、風野はびっくりしました。それは、約40万人のオーディションをして、その中から400人を選び、広大なオープンセットを建てて、約2年間実際にそこに住んでもらって、そして作品を作るというものでした。ひよえぇ、本当ですか?と。

かつて、こんなスケールのアプローチで作品作りをしたというのは聞いた事がないし、俳優のスケジュールをそこまで確保して行われた作品も聞いた事がありません。実験的な作品として括るには、かなりのお金も時間もかかっているし、すごいなと思いました。

この映画で試されるのは、あるいは挑戦として行われている事の一つとして挙げられるのは、“俳優の役作り”についてだと思います。実際に2年間住むことによって、彼らの動き、言葉、佇まいは、かなりリアルで本当になっているんだろうなと思います。でも、それが本当にリアルである必要があるのか。

“俳優の役作り”に関しては、すでに世界中でいろんな方向性で語り尽くされ、確立されている方法論もあります。ただ、どれも正解で、どれも正解ではないので、俳優たちは常に考え、悩み、挑戦しています。

一番はっきりと目に見えて分かりやすく観客に伝わる役作りは、髪型の変化、体重の増減かもしれません。とにかく俳優たちは、そこにしっかりと存在するために、あらゆる手段を用い、作品の中で生きる手がかりを探します。アクションや所作、言語に関して習得する技術もまた、役作りの1つとも言えると思います。

ただ、俳優たちが一番悩んで考えるのは、目には見えない、内面に迫るアプローチであるなと考えられます。これもまた、100人いたら100通りのやり方がある訳ですが。

映画「すばらしき世界」を観た帰り道。風野は、役所広司さんの凄さに、無双っぷりに圧倒されて、ため息をつきながら帰っていました。役所さんがどうやってあのお芝居に向かっていかれたのか、本当のところは誰も分からないと思うんですけど、少なくとも、本当の全てを経験していないにも関わらず、まるで偽りなく、その人間として立たれている姿は、本当に凄かった。

そして思う訳です。これができるのが本当にすごい俳優だよなあと。俳優の仕事は、そこがその日に初めて行った場所だとしても、まるで数十年住んでいるように見せる事ができる。やっていない事をやったと信じて、やっていた、やっていると見せる事ができる。

ここに、フィクションだからこその面白さ、作品が生まれる面白さがあるんだよなと思いました。

実体験していなくてもそれを表現する事ができる、何もないところに命を作る事ができる。あらゆる時空も超えて作品が作れるし、飛び越えていける。映画やドラマって、作品が生まれるって、そういう事なのかもしれないと思っています。

去年から年明けにかけて、戦後から高度経済成長の時代に作られた作品を振り返る事が多くなりました。黒澤明監督や岡本喜八監督の作品、三船敏郎さんや高倉健さんの出ている作品です。

この時代の“俳優の役作り”という言葉は、どのように捉えられていたのだろうと。戦争を経験した後に、映画の世界に俳優の世界に入って何かを表現すると覚悟を決めた人たちは、何を考えてそこにいたんだろうと。

きっと今みたいに手段が多くはない時代の中で、監督や俳優という仕事をやり続ける事ができた人たちは、ただ強烈に存在し続けたんだろうなと思います。存在として、猛烈に、強烈に。

強烈な作品に出会った時、スクリーンから、あるいはテレビから手が出てきて胸ぐらを掴まれる感覚になる事があります。それは、“どう生きるんだ?”と言われているような感覚。

どうやって、強烈に、この一瞬を生きていくのか。

熱いコラムになってしまいました(笑)。ちょっと熱風でしたかね。あつめるだけでなく、自分も力強い風になろうと決めた、2021年4月。これからも宜しくお願いします!

それでは、又、風の吹く日に。

『風をあつめて、巻き起こす』は、次回4/16(金)更新予定です。お楽しみに!!