むせるほど濃いハイボールで乾杯

好きな街があります。私はおしゃれな街より、下町っぽい方が好みではあります。例えば、私が育った蒲田なんか、着飾ってなくて、欲望に素直で、いい街だなって思うんです。これは住むとなるとまた別の話なんですが、とりあえずそれは置いておきましょう。

いい街ってのは、街を歩く人のスピードがのんびりしている気がするんですね。みんな思い思いに街の様子を目で楽しんでいるから、気がつけば歩みが遅くなる。これがチェーン店ばかりの都心だったら、店に興味が湧かず、スッと通り過ぎてしまう。

いい街は、ふっと目をやった横丁に魅力的な飲み屋があったりするんですね。

▲こんな路地裏を歩くのも楽しい

その点で言うと、大井町はいい街です。最近の言葉で言えば“バッファ”があるといえばいいのかしら。まっすぐだった道がくねくねと曲がったり、商店街の端っこにおばあちゃんがやってる駄菓子屋があったり。大井町を歩いていると、ふとした瞬間に魅力的な飲み屋街が現れたりするんです。

▲立ち飲みオヤジをそそる外観

大井町駅西口から少し歩いたところに、飲み屋が固まった一角があるのですが「ビー玉」は通りから一本入った細い小道にあります。人がすれ違うのがようやくの狭い道なので、こんなところに店があるのかと思いますが、可愛らしい外観で、気になっていたんです。入ってみましょう。

▲L字型の落ち着く造り

「立ち飲みビー玉」は若い女性が営んでいます。手練れな感じも嫌いではないのですが、こういう場を作ることが大好きだというフレッシュな女性店主です。オープンして1年ちょっとだけど、早速たくさんのお客さんに愛されています。この日も、私たちが入ったあとから、続々とお客さんたちがやってきました。

▲「ビー玉」の店名は、店主の名前をもじってつけられました

店主にお勧めを聞くと「うちのお刺身はいいですよ」って胸を張るから、そりゃ頼まないわけにはいかない。「とりあえずハイボール」と頼んだら「うちのは本当に濃いですよ」と返ってくるから、私はどんどん楽しくなってきました。

というわけで、お刺身とハイボールを頼んで、しばし待ちます。もともと立ち食いだった店を改装したと聞きましたが、やはり店は人映す鏡といいましょうか、内装のセンスがとてもいいんです。可愛らしいけど、シンプルで、若い人も年配の方もきっと落ち着くんじゃないかと思うんです。