風俗店に牛丼をお届け
渡辺 商品を運んだのに10分間、受取り人が見つからないとキャンセルになるんですが、それも数少ない楽しみの一つですね。「廃棄」という扱いになるので、どう処分してもいいので。
太田 僕はいつも運んでいるラーメン屋さんの「サンラータン」を食べたことがなくて、どんな料理なんだろうって気になっていたんですね。だからキャンセルが出たときは嬉しかったな。仕事が終わるまで大事に持ち歩いて、家で食べたけど、おいしかったです。
渡辺 僕は松坂牛のハンバーガーですね。でも、その配達直前にマックを食べちゃったから、同じように家に持ち帰ったんですよ。けど、肉汁がたっぷりすぎてバンズがぐっちゃぐちゃ。1個3500円のバーガーはうまかったけど、できればアツアツを食べたかった。
太田 変わった配達先とかありました? 僕は公園の入り口で待ち合わせをしたことがあります。
渡辺 僕は風俗店のプレイルームですね。受付を通って部屋に入って、女性に膝枕をされている男性に牛丼を手渡したことがあります。
太田 それは最強のカードじゃないですか。いちいち経験が強いなぁ。どんな人だったんですか。
渡辺 いや、そんなに顔まではあまり覚えてないんです。お客さんの顔はあんまり見ないようにしている。
太田 たしかにノーメイクの女性が多いので、失礼にならないようにした方がいいですもんね。あまり目を合わせない配達員がいたとしたら、気を遣っているんだと思って、その気遣いに対するチップをいただけると嬉しいです(笑)。
渡辺 自分は、本を出せたので配達員はちょっと一休みですけど、これからどうしようかなと。
太田 たしかにライバルも増えたし、稼ぎも少なくなりましたよね。
渡辺 緊急事態宣言で酒の提供が禁止になったりしたことで、注文が増える可能性はありますね。コンビニで酒とつまみという注文を受けることも多くなりました。
太田 空いた時間にできるのはたしかに魅力で、劇場の出番の合間に仕事をすることもあるけど、芸人としての本音を言うと早く辞めたいですね。
渡辺 みんなそうなんじゃないですか。一生続く仕事とは思えないし。自分は人生を逆算して、無理なく暮らせる金額を稼げたら辞めるつもりです。この本が売れてくれるといいんですけど、いつになるやら。
太田 いつでもできるからこそ「辞める」と思わない限りずるずると続けてしまう。
渡辺 楽なんですよね。だから、流されてきたとも言える。ここでしか働けない人も多いと思います。
太田 たしかに。居心地がいいのかも。
渡辺 誰からも干渉されないし。もしかすると、みんなにとって自分の居場所なのかもしれない。
太田 危険ですね。よし、決めました。僕は『キングオブコント』の決勝にいったら辞めます!
渡辺 おおっ! 大胆宣言! 楽しみにしてますね!
太田 頑張ります!
渡辺 配達中に顔を合わせることがないよう、お互い頑張りましょうね! 今日は貴重な時間をありがとうございました。
太田 ありがとうございました!
〇「ウーバーイーツ配達員ヘロヘロ“4コマ”日記」も連載中(不定期)
タイトル:アラフォーウーバーイーツ配達員ヘロヘロ日記
著:渡辺雅史
発売:2021年4月26日
定価:1,100円
ウーバーイーツ配達員として働く四十路ライターがつむぐ、悲哀と憂鬱の実録ドキュメント。