超ローカルネタ連発で地元民熱狂
17:02。ライブがスタートした。本ツアーのオープニング映像に続いてEXITの2人が登場し、まずは挨拶がわりに『なぁ人類』を歌う。りんたろー。は、最近お気に入りのスカーフェイスシャツ、兼近は北海道・大樹町公演のときと同じチェックのセットアップを着用。観客の皆さんは、歓声の代わりに大きな手拍子で喜びを表現していた。
続くトークのコーナーでは、ご当地ネタを交えながら会場の雰囲気を和ませてゆく。県内の人気遊園地『ベニーランド』のCMソングを歌ったり「ウジエスーパー(=宮城の有名なスーパーマーケットチェーン)の“ウ”は?」と聞くと、会場が「うれしいの“ウ”!」と答えたりという、地元ならではのコール&レスポンスも。
また、りんたろー。の独自調べでは「東北での人気は俺のほうが強ぇんだよ」とのことだったが、実際は「りんたろー。カッコいい!」の声よりも「かねちーカッコいい!」の声のほうが大きく、その結果に「ホームだと思ってたのに……」とガッカリする様子がことさらウケていた。
恒例『方言男子』のコーナーでは、りんたろー。が「ベニーランドさ一緒に行ぐべね」「あんだのこと、いぎなし好きになったっちゃ」とイケボで言うも、会場はそこそこの盛り上がり(笑)。兼近の満を持しての「好きだっちゃ」もなぜか同様で、りんたろー。が思わず「もしかして、こうは言わないの?」と聞くと、会場の面々が苦笑いしながらうなずく場面もあり、それが大きなオチとなって場内が一層大きな笑いに包まれた。
漫才は「どんぐりころころ」「サザエさん」「テナガザル」の3本を披露。漫才は彼らの芸の「核」であり、EXITのライブのメインディッシュとあって、このときが会場が一番沸いていたと思う。漫才のつかみでは「名取市は塾とパーマ屋が多い」「キンモクセイを庭に植える家が多い」「雪が30センチ積もると学校が休みになる」など、ここでもご当地「あるあるネタ」をふんだんに盛り込んで、地元の人を爆笑させた。
特にキンモクセイのくだりでは、私の近くにいた夫婦と思しきおふたりが顔を見合わせて笑っていて、ハッピーな気持ちになる。きっと、おふたりの家にもキンモクセイが植わっているのだろう。
毎回変わる特別企画は『自転車ゆっくり走』。ステージの端から端まで(30m弱)ゆっくりと自転車をこぎ、2分以上かけてゴールすればミッションクリア、成功したら場内の20名にプレゼントが進呈されるというものだ。
ちなみに、ルールを説明しているときにりんたろー。が、本ツアーに同行しているEXIT Charannelの編集者としてもおなじみの、湘南パイプキャッツ望月崇徳をいきなり呼びつけ、ステージセットの不備を指摘。「ちゃんと謝って!」と促して客前に引き出したのだが、実はそれは叱責に見せかけた優しい気遣いで、彼をみんなに紹介するためのくだりだった。一人一人が大事にされているチームEXITのブラザーフッドが垣間見られた場面だったと思う。
かくしてこの競技、りんたろー。からスタートしたのだが、端から端までゆっくり走行した結果は26秒。つまり、兼近が1分34秒以上で走らなければクリアならずという厳しい状況になってしまった。にもかかわらず失敗したりんたろー。が「今までお前は不可能を可能にしてきただろ!」と、弱気になっている兼近を鼓舞し、鬼コーチよろしく「俺が指示出すから!」と兼近にハッパ(というかプレッシャー?)をかける場面も。
さすがに30メートルを1分半もかけて走るのは、いくら“持ってる男”の兼近でも無理ということで、チャレンジは失敗に終わった。次は時間を「1分」と半分に短縮するも、それも不成功……。仕方がないので、最後は「自転車にまたがって面白いことを言ったらOK」となり、2人ともモノボケに近い一発ギャグを披露して、どうにかクリアと相成ったのだった。
20名の当選者は、自分の座席の下に「EXITマーク」が貼ってあるかどうかで決まる。ところが、ハズレてしまった小さい女の子が激しく泣き出してしまうハプニングが起こる。大きな泣き声にうろたえる場内、しかし近くの親切な女性が、自分のアタリ券をその子にあげたことで瞬く間に収束した。
兼近が「よかったね! ちゃんとありがとう言ったの?」と呼びかけ、途端にほんわかした空気に。「これからの人生、手に入れられないものもあるかもしれないけど、そのときは心を鬼にして、お母さんがビシッとしてください」と、元ベビーシッターらしく締めて、このコーナーは大盛況に終わった。
「活性化」にちなんだ企画『瞑想ゲーム』のVTRを挟み、終盤は人気YouTuber、スカイピースとのコラボ曲『ぴえんは似合わないぜ feat. スカイピース』を披露。弾けるようにステージを走り回りながら歌う2人に、会場が一段と沸き立つ。最後は恒例の記念写真〔客席をバックにした全体写真:各地で撮影された写真はFC内で見ることができる〕を撮影して終了。
こうして1時間15分に及ぶライブは幕を閉じたかに見えたのだが、客席からはアンコールを求める拍手が鳴り止まない。数分後、2人は再びステージに現われ、Da-iCEとのコラボ曲である『I got it get it feat.Da-iCE』を歌って再度会場を盛り上げまくった。
被災地を初めて訪ねたことで震災が“自分ごと化”した
終演後に「アンコールは新鮮でしたね」と言うと、りんたろー。は「いやー、初めてですよ……」と照れ笑い。兼近も同様に「2度とやらない(笑)。アンコールはさすがに照れ臭いですね。(自分のなかで)違う!違う!違う!違う!ってなっちゃう」とはにかみながら答えていた。
被災地での開催ということで、今回のライブに特別な思いがあったのかを、りんたろー。に聞いてみた。
彼は真剣な面持ちで「そうですね、最初に献花場に行かせてもらったんですけど、今まで行った過疎地域とは事情が違っていますから。でも、津波から残った松とか、被害から立ち直ってできた朝市とかを見て、そこにいる人たちの活気を感じさせてもらって、自分たちも逆にエネルギーをもらいましたね。しんどいことがあっても、まだ諦めずに立ち上がれるんだって気持ちにさせられた。そして、僕たちに何かできることはないだろうかってことを改めて考えさせられた」と話してくれた。
兼近も、りんたろー。の言葉を受けて「僕は震災のときは北海道にいて、今ひとつ現実的じゃなかったんですよね。“対岸の火事”みたいな部分があって、被災地のこともわかってなかった。年を取るごとに知るようになっていったんですけど、被災地に来たのは今回が初めてです。実際に訪れて、こういう風に人々と触れ合って、そういう場所を見て、復興していく人たちを理解する――それによって僕が、どういうことができるのかっていうのが現実的に見えてきて。やっと“自分ごと化”したなって今日、思いました。今後は口だけで思いやるのではなく、自分がどういう助けになれるかってことを見せていく、行動していくってことですね」と語る。
そういう意味では、今回の訪問は名取の人たちに娯楽以上のもの――まさに市長が話していた“心の復興”を実現できた回だと感じた。
〇未曾有の被害をもたらした震災から10年…EXITが「心の復興」をサポート
〇EXIT OFFICIAL FAN CLUB「entrance」