歩く歩く、そして飲む
ペットボトルのラベルをはがしてみると、ウイスキーを入れたばかりの上の方だけ色が濃くなっているのがわかります。そんなときは、蓋をして、そっと上下をひっくり返して、混ぜます。
そっと、そうっとね。そうしないと気が抜けてしまいますから。素人に毛の生えたようなバーテンダーがくるくるかき混ぜているのを見ると、マドラーを奪って鼻に突っ込みたくなってしまいます。
飲みやすくなるだって? そんなのいらないんだよ。私たちはね、シュワっとした刺激が楽しみたいんだから。
というわけで、こちらの自家製ハイボールも炭酸水の機嫌を損ねないように、そっと攪拌するわけです。
完成したハイボールを片手に私は街を歩きます。歩きながらグビ。信号待ちでグビ。好きなときに飲めるってのがいいんです。街ゆく人たちは、私が酒を飲んでるてことに気がついていないのもいい。
スーツを着て歩く勤め人の横で、夏休みの私は酒を飲む。
なんというか、背徳的でゾクゾクします。
これだったら朝からいけるかも。ちなみにこのときは夕方4時で、本当だったら、もうすぐ酒場が開くかなって頃合いでね。ハイボールを飲むたび、酒を飲みたいなあって気持ちが加速していきます。
そして、この移動式ハイボールのいいところは、酒がなくなったら町中で補給できるとこなんです。自動販売機を見つけたら、そこで炭酸水を買えば、冷えたハイボールがあっという間に完成する。
飲み終わったペットボトルは横のゴミ箱に捨てさせてもらってね。自販機で新しく買ったから、これくらいはいいですよね。
こうしてハイボールを飲みながら街を闊歩すると、この世界は酒飲みのためにあるような気がしてくるから不思議です。
世の中は、いたるところがハイボール給水所なんです。マラソン選手もびっくりですよ。
歩くのが楽しくて仕方ない。
歩く歩く、そして飲む。
途中で良さそうな銭湯を見つけたから、汗を流して、またハイボールを片手に歩く。
このま42.195キロくらい歩けるんじゃないかて思ったのも束の間、3本を飲んだあたりで、くらっと酔いが回ってきたし、トイレにも行きたくなった。そして、屋外はまだまだ暑い。
脱水症状になったらまずいということでね。そろそろ家で飲み直すことにします。
いやあ楽しかったな。みなさんもぜひお試しください。