どうしてこんなところに来てしまったのか・・・
着校してすぐ、幹部候補生としての教育が始まる。自衛隊員としての挙動から武器の知識、入校ほどなく銃を手に走り回ることになる。もちろん体を鍛えるだけでなく、精神論も説かれる。
「お前たちは国のために命を捨てる存在だ」と言われ、訓練中には「水筒の水は部下への末期の水だ。飲んではいけない(時と場合に応じて飲むこともある)」と指導を受ける。それまで高校生として、のうのうと生きてきたところ、飛び込んだ世界の厳しさをいきなり叩きこまれるわけだ。
このような急激な環境の変化に、ギャップを感じることもままある。私自身、訓練のテストで「敵の歩哨(要するにスパイ)を見つけた場合、生きたまま捕獲するのが最も好ましいが逃げられそうな場合には刺殺、できなければ射殺する」との回答を書いたとき、ふと「なんか、すっごいこと書いてんな」と思った。
こうしたことは、ほかにもたくさんある。ふとしたときに自身の状況を客観視してしまうことで「“何やってんだろう、自分”と思った」と話してくれた女子はたくさんいた。
ただ、多数派は「しんどいのはしんどいけど、まぁ自衛隊だからこんなもんだろう」と割り切れるタイプであるようだ。
詳しく見てみると、
「想像通りだった」
「入校前に地方協力本部の人が、女子学生と話す機会をつくってくれたから、だいたいわかっていた」
「防大を舞台とした漫画を読んで心の準備をしてきたため、それほど大きなギャップはなかった」
というように、事前に情報収集をしてイメージを膨らませてきたタイプと、適応能力が高いタイプに分かれることがわかった。
後者は、
「最初は“なんだこれは”と驚いたけど、こんなものなのかと納得して過ごしていた」
「意外とやればどうにかなるものだと思った」
「もともと順応するのが得意」
「初めは囚人のような気分になったけど、段々と慣れていった」
「はいはい言っておけば終わる」
「これをすれば怒られるとか、ここまではセーフだとか、そういうことをゲーム感覚でやっていた」
「理不尽な指導は理不尽すぎて笑えてきた」
などと振り返る。
※本記事は、松田小牧:著『防大女子 -究極の男性組織に飛び込んだ女性たち-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。