年上のいじめっ子を撃退してくれた父
楽しかった思い出ばかりではない。小1の頃、俺はいじめに遭っていた。
毎朝、集団登校していたのだが、6年生ふたりが1年の俺を標的にしたのだ。毎日のように前を歩く俺のランドセルを、後ろから蹴とばしてくる。時には蹴り倒されることもあったから、泣きながら小学校に通っていた。
また、あるときはBB弾の入ったピストルで、俺を狙い撃ちすることもあった。もちろん痛い。「痛っ!」と言って嫌がる俺を見てケタケタ笑っていた。そして、ランドセルを蹴飛ばし、前のめりに転んだ俺を見て、いじめっ子たちはまた笑った。
小学校1年のときに6年生なんかに勝てるはずがない。なにしろ怖かった。親や先生に言ったら報復されるんじゃないかと思って、誰にも言えなかった。
学校に行くのが日に日に嫌になった。それでも親や先生には言えなかった。入学した時はピカピカだったランドセルが、秋にはボロボロのランドセルになっていた。
ある日、父親に居間に呼ばれた。夕飯の前だったが食卓に家族が並んでいた。仕事から帰ってきた父親は、きっと母親とも話し合ったあとだったのだろう。
いつもは見せない優しい顔で「どうしてそんなにランドセルを乱暴に扱うんだ? 正直に話してみろ」と言った。せっかく買ってやったランドセルを乱暴に扱うようなやつは許さねーぞ、という空気も感じた。
ありのままの事実を伝えると「わかった」と言ったきり父は何も言わなかった。翌日は会社に行くのを遅らせてくれたのだろう。いつもの集合場所で、6年生ふたりを呼び出し、話しをしているのが見えた。
すごく怖い顔をしていたが、向こうの言い分も聞いているようだった。しばらくすると、そのふたりは俺に「ごめん」と謝ってきた。
会社から帰ってきた父親は「お前がトロトロ歩いて、先に進まないからだと言ってたぞ」と俺に言った。俺は腹が立って涙が出そうになった。「絶対にそんなことない! ちゃんと歩いてるのに、あの人たちが蹴ってくるんだ!」と珍しく強く主張した。
「そうか、わかった。だったらお前を信じる。また何かあったら、すぐお父さんに言ってこい」と俺の頭を軽く撫でてくれた。
次の日から、いじめはピタリとなくなった。俺にとって父親は過酷ないじめから救ってくれた、仮面ライダーよりかっこいい正義のヒーローとなったのだ。
(構成:キンマサタカ)