地下鉄を一元化すると消費者にこんな利益がある

地下鉄一元化には、利用者に直接的な利益があります。初乗り料金の重複解消です。

通常、鉄道運賃は初乗り運賃と距離運賃で構成されています。初乗り運賃は基本料金のようなもので、運行各社が設定した最低単位の乗車距離によって決められています。これに乗車区間や乗車距離によって料金が加算されます。

複数の鉄道会社が相互乗り入れによって直通運転をしている場合、利用者は乗り換えなしで目的地まで複数の鉄道会社を利用することになるので、便利ではありますが初乗り運賃は利用する運行会社ごとに加算されていきます。

東京メトロと都営地下鉄には、乗り継ぎの際の初乗り運賃に数十円の特別割引が適用されてはいますが、経営統合されれば両方から初乗り運賃を取られるという不毛な状況はなくなります。地下鉄全体の一元的な運営は、利用者ベースで考えることができるようになるのです。

形式的といっても、東京メトロが民営化されることによって、利用客へのサービスが向上した例もあります。営団地下鉄の頃は、広告事業や駅構内売店を除き、鉄道事業以外では収益を上げてはいけないことになっていました。

現在は、カフェやレストランなどの商業施設「エチカ」の事業が展開されています。地下鉄の鉄道施設に隣接した周辺スペースを利用し、商業施設を運営することによって、利用者の利便性を高めることができるようになったのです。

▲池袋西口地下街 出典:PIXTA

行政の手が離れるとトイレが綺麗になる

地上の路線を運営する鉄道会社のように土地を持っていない地下鉄会社は、大きなデパートを建てるなどの事業は難しいのですが、地下の空間を有効利用したサービスが展開できるのは、民営化の恩恵です。

さらに、東京メトロと都営地下鉄を一元化し、民営化することで、もっと良いサービスの提供が期待できます。収益力自体は、現在の東京メトロも都営地下鉄も、両方とも持っています。民営化は利用者へのサービスが向上する話なのです。

行政組織でなくなると、まず「お客様目線」を持つようになります。平成30年(2018)に大阪市営地下鉄の民営化が進められたときには、駅のトイレが綺麗になったと話題になりました。

民営化の利点は、こうしたお客様に提供する施設の向上や、そのメンテナンスだけでなく、鉄道会社が持っている空間をどのように使うかという発想や、アイディアが生まれる環境ができるところにもあります。

東京の地下鉄が、もっと自由な発想で経営できるようになっていくと、いろいろなことが事業化できるようになります。

例を挙げると、通路を利用してのストリートライブは、現在でも一部ですが、申請をして許可されれば、スペースの一画を無料で使わせてもらうような形で行われています。

たとえば、これを事業化して、利用客に楽曲を提供するサービスができる可能性もあります。最近は他企業と連携して、リモートワークなどに使えるボックス型のミニオフィスの設置が試験的に行われているところもあります。スペースを通行に限らず利用することで利便性を向上させたり、エンターテインメントなど利用者を楽しませるようなサービスの提供を行ったりできる可能性が広がります。

そして収益を高めていくことにより、地下鉄は立派な納税企業になります。これまでは政府や東京都が出資をしていたのに、逆に地下鉄が納税主体になることも、民営化の大きな要素です。

都心部の交通を担う鉄道会社が分断され、2つの鉄道会社がいがみ合っているよりも、一元化されて余計な利用料金がなくなり、さまざまな事業が生み出されていくほうが良いに決まっています。もっと住民や利用者の目線で、便利で楽しい地下鉄を考えていけばいいのです。

民営化と株式上場は、鉄道を単なる移動手段に限定されない「元気な事業」に生まれ変わらせるのです。