2021年に行われた東京五輪で男子柔道100キロ級にパキスタン代表として出場したシャーフセイン・シャー選手。彼の経歴は少し特殊だ。イギリスで⽣まれ、2歳の頃に日本へ来日。そこからは日本で過ごし現在に至る。ここでは、柔道を始めたきっかけや柔道の魅力について聞いてみた。
まさかの間違いから柔道人生が始まった
――柔道を始めたきっかけが、“空手と間違えて”とお聞きしたのですが、本当ですか?
シャーフセイン・シャー(以下、シャー):はい、本当です(笑)。もともとは、父がやっていたボクシングをやろうと思っていました。そのために、まずは空手を始めようと。
道場に入門したものの、自分が思っていたような空手の型とかを全然練習でやらなくて……。でも「最初だし、こんな感じなのかなぁ」と深く考えずにしばらく続けました。
あるとき、自分がやっているスポーツは柔道だと気づいたんです。でも、そのときには柔道の面白さもわかり始めていたので、そのままやり続けようと思い、練習に打ち込みました。そんなふうに思っていたら、いつの間にか23年もやっています(笑)。
――そのようなきっかけだったんですね(笑)。その後、柔道をやめてボクシングを始めようとは思わなかったんですか?
シャー:2回思ったことはありました。やっぱり、父がやっていた影響もあって、柔道よりもボクシングがずっと好きだったので。
1回目は、中学校を卒業するタイミングです。高校に入ったら、いよいよ本格的にボクシングを始めようかなと思っていました。
でも、そんなときに安田学園からお声掛けをいただいたんです。すごい成績を残したわけでもないのに、とても熱心に誘ってくださって。条件面も推薦で授業料など全額免除までしていただけるというので、信じられないような気持ちでした。
はっきり言って、家はお金に恵まれていなかったので、そういった意味でも両親に負担を掛けずに済むというのは大きかったですね。
ただ、一番はやっぱり先生の熱意でしたね。先生に惚れて「そこまで言ってくれるなら!」と思い、高校でも柔道を続けることにしました。
――なるほど。では、2回目のタイミングはいつだったのですか?
シャー:2回目は、高校卒業後ですね。進路を「キューバに渡ってボクシングをする」か「筑波大学に行って柔道をする」という2択に絞っていたんです。
正直、難しいだろうなと思いながら筑波大学は受験したんですけど、なんとか合格しまして。筑波大学に受かっていなければキューバに行っているはずなので、こうやって柔道着を着ていることもなかったんだろうなと思います(笑)。