響き渡る両親の怒声に悩み・・・

転校した小学校では、すぐに溶け込むことができた。友達もたくさんできたが、家庭のほうに問題が発生してしまった。両親の仲が日に日に悪くなっていったのだ。

父親はいかにも「昭和の親父」といった仕事人間で、家事・育児は母親がやって当然だと思ってる人だった。帰ってきてテレビを見ながら「メシまだか?」という態度が日常茶飯事。

だが、5歳下の母親は、仕事から帰ってきたら暇なんだから家事育児を手伝ってくれてもいいじゃない、という考えだった。きっと母親はいつもイライラしていたんだろう。

価値観のズレに加えて、父親は酒癖も悪かった。一軒家に引っ越して外に飲み歩くことが減ったのか、毎日家に帰ってくるようになり、目に見えて仲が悪くなっていった。

毎日のように続く怒鳴り合いのケンカと響き渡る怒声。母親も気は強いほうだったので、父親にガンガン向かっていった。だから、ケンカはどんどんエスカレートしていった。

小学生の俺は、大好きな両親が毎日怒鳴り合いのケンカをしている姿を見るのがとてもつらかった。妹もそれを見て泣いていたが、俺にはどうすることもできなかった。

▲だから俺は家ではケンカしたくない

ある日、酔っ払った父親はいつものケンカの最中に、俺と妹に「2階に行っていなさい」と言った。

あとから聞いた話だが、父親は包丁を持って母親を脅かしたらしい。母親はさすがに危険だと思い、その日のうちに俺たちを連れてビジネスホテルに夜逃げした。

あくる日、俺と妹はビジネスホテルから小学校に通った。すると、夜逃げされて心配になった父親が昼間から小学校に来た。校庭で友達とドッチボールをしていたら、校舎から酔っ払った父親が顔を出したからびっくりした。

教室にいたクラスメイトが「お父さんが教室に来てるぞー!」と叫んでくれて、見上げたらベロンベロンに酔っ払った父親が上機嫌で手を振っていた。