クラゲコーナーで宮沢賢治の『やまなし』の世界に浸る

その物語とは、宮沢賢治の『やまなし』である。

幼き日に触れたことのある方も多いのではなかろうかと思う。短くて、非常にテンポもよく、青空文庫(著作権切れの小説を載せたサイト)にも載っているが、カニの兄弟が会話をしている形で話が展開されており、物語は、5月と12月の2部構成となっている。

まず5月の段。早速、謎の存在、というか、哲学的にわかりにくく言うと、もはや“ある”のかすらあやふやな「クラムボン」が登場する。川底のカニの兄弟によると「クラムボン」は上で笑っているが、魚が通ると死に、魚が下流の方に行くとまた笑い始めるらしい。魚は“悪いこと”をしつつ上流と下流を往復している。しかし「鉄砲玉のようなもの」に食べられ、カニの兄弟はおびえる。そんな彼らに、カニの兄弟の父親は、カワセミが魚を捕らえたのだと教える。この時、兄弟はまだ幼い。

そして、12月の段。カニブラザーズはすっかり成長している。7ヶ月も経つとさすがに彼らだけでなく、彼らを取り巻く川底の様子も変化している。その日、カニブラザーズが吐き出す泡の大きさ比べをして楽しく過ごしていたら、突然、黒いものが落ちてくる光景に出くわしてしまう。そこで当然5月の段での、カワセミ事件というトラウマを思い出すわけだ。

だが、父親がそれを見て、タイトルの「やまなし」であることに気づいた。カニブラザーズwithファーザー(英文法としては誤りである)の3匹は「やまなし」を追いかけた。しばらくすると「やまなし」は木にひっかかって止まる。どうやらカニも酒を酌み交わすらしく、カニファーザーが『待て待て、もう2日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰って寝よう、おいで』と呼びかけて、彼らはおうちにかえろ、をして物語も終わりなのである。

本筋からは外れるが、わたくしはカニブラザーズの年齢が気になって仕方ないのだ。話の流れからして、3匹はおそらく2日後、晩酌をするのではないかと思う。“視かけ”によらず、意外と大人といったところなのか。皆さまはいかが思われますか?

満を持していよいよ、クラゲと「やまなし」の関連性についてお話させていただく。お察しの通り……かは不明だが、クラゲには「クラムボン」みがある。いや、むしろ「クラムボン」にクラゲみがあるのかもしれない。『やまなし』が教育の現場に用いられると、お決まりのように「クラムボン」の正体の考察という場面に出くわす。

わたくしが初めてこの物語を読んだときの「クラムボン」の解釈については、全く文献が残っていないため残念ながら知る術がない。しかし、文学齧りかけ少女だったわたくしのことだ。なにやらおもしろい空想をしたためているであろう。ひょんなことから思い出すかもしれないので、その時はなんらかの媒体で発表させていただきますので、その旨どうぞよろしゅう。

ちなみに一般的な「クラムボン」の解釈としては、プランクトン説が有力なようだ。しかし、そういった常識を一旦置いて、クラゲの水槽の前で、

『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳はねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』

のような、カニブラザーズの会話を頭の中で反芻するのは、やはり楽しいひとときである。これからはひとしきり想像を巡らしたら、忘れないように写真も撮ろう。うまく撮ろうと思わずに、わたくしがこれまで文章を操ってひとりでに楽しんできたように、ひとりでに写真を楽しもう。

この連載が進むにつれて掲載される画像が増えてきたら、コヌマが幸せ「写真」沼にハマりつつあると思い、微笑んでいただきたい。

今月の小沼的“この瞬間”を紹介

さてさて、世の中は広く、わたくしに近しい人々の中には「撮り上手」が少なからず存在する。そして、わたくしは彼らに共通して言えることを見つけてしまった。もちろん統計など取っていないので、あくまで独断と偏見である。

「撮り上手」あるいは「撮り好き」たちの共通点、それは、“今のこの瞬間”を恐れずに楽しむことができるところだ。異論は認める。(デジャブ)(詳しくは「ささやかわいいの回」を参照)

これは私が推測するに、写真というものの性質に由来するのであろう。シャッターチャンス、という言葉があるくらいだ。今! というのには、いつでもときめくに違いない。実を言うとわたくしは、転ばぬ先の杖、をやりすぎるタイプだ。そしてどうやら、今を楽しまないというのは、精神衛生上あまり良くないらしい。

そういや「撮り上手」の何某は、以前不安に駆られて睡眠に支障をきたすコヌマを傍目に、こんなことを言った。

「今これやんなきゃしぬ! なんてこと、ほとんどないんだからさ、大丈夫だよ、ちゃんと休まないのはだめだけどさ!」

目からウロコだったのをよく覚えている。素敵な言葉だから、皆さまにもおすそ分けを。

国民的アイドル「嵐」さんの『Troublemaker』の歌詞にも、そんなものがあった気がしたので調べてみると、これだ。

『この瞬間のjuice do it! do it! 飲み干したなら つらぬけ Shake it up! Shake it up!』

明るくなれる素敵な曲である。歌詞も気持ちを前向きにしてくれる。

ちょぼちょぼ「撮る」を身に付けつつあるコヌマの「この瞬間!」を、今回は掲載させていただくことにした。

まずはこちら。母上がわたくしへ用意してくれた手土産のポケモンドーナツ。無惨な姿になる前の可愛いしかもちあわせていない「この瞬間!」である。自らの手で、というか口で破壊するにも関わらず、安らぎをくれるその甘さを前に、ワクワクもしてしまっている「この瞬間!」である。

▲母の手土産のドーナツ。カワイイ!!

そしてこちら。これからシャワーを浴びて、せっかくセットしてもらった髪の毛が無惨になる予定の、美容院帰り「この瞬間!」のコヌマである。

▲美容院帰りの小沼の瞬間

やはりこちらも、ぐしゃぐしゃになるにも関わらず、温かいお湯を想像し、ワクワクしてしまっている「この瞬間!」である。

なるほど。写真に説明を加え、“ひとり博覧会”を開催すると、より一層良いかもしれない。

今回の連載では、新しい趣味に目覚めるかも!?  というドキドキ展開を含むこととなり、また目先が変わった。毎度毎度の連載でも毎度毎度違う発見があり、やはり「幸せ沼」だ。本人もハマっていくのだから、きっと皆さまもズブズブであろう。ほんとうにいつも読んでくれてありがとう。それでは良い午後を。


プロフィール
 
小沼 綺音(こぬま あやね)
2000年3月18日生まれ。東京都出身。「小学生に間違えられる」という見た目とは裏腹にクールで大人びた視点を持つ。リアクションや言葉のチョイスが面白く、番組で共演する芸人からの評価も高い。『青春高校3年C組』では軽音部に所属し、キーボードを担当していた。Twitter(@ayane_karona_ru)