『M-1グランプリ2019』決勝にて一躍、人気者となったお笑いコンビ・ぺこぱ。その後の活躍はご覧の通りで、数々のテレビ番組に出演、現在もレギュラーを多く抱える売れっ子芸人の一組だ。

彼らの漫才で話題となったのは、松陰寺太勇による“ツッコまないツッコミ”。相方のシュウペイがどんなに暴走しても、どんなにおどけても、松陰寺は否定することはなく笑顔で全てを飲み込んでいく。新しい漫才のスタイルは、それまでお笑いへの興味が薄かった層の人たちをも取り込み、大きなムーブメントを生み出した。

そんな彼らが約5年ぶりに単独ライブを開催。その様子を収めたDVD『ぺこぱ単独ライブ「P」』が発売された。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2022年3月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

5年ぶりの単独、きっかけはコロナ禍と先輩のひと言

――初めてのDVDが発売されましたね。

松陰寺太勇(以下、松陰寺) すごくうれしいんですけど、TSUTAYAとかに置いてあるのを実際に見ないと、実感は湧かないかもしれないですね。

シュウペイ 昔は、ほかの芸人さんがDVDを出しているのを羨ましいなと思いつつ、自分たちなんて無理なんだろうなと思っていたんです。僕としては(DVDを出すのは)ひとつの大きな目標だったので、達成できたうれしさもありますね。

――約5年ぶりの単独ライブを開催しようと思ったのは、なぜだったんですか?

松陰寺 僕らは2019年の年末、『M-1グランプリ』で世に出たんですけど、2020年になってすぐコロナ禍になっちゃったんです。お客さんと直接触れ合える機会もなかなかないなかで、毎日テレビ局へ行って戻ってを繰り返していた時、サンドウィッチマンさんの楽屋へ挨拶に行ったんですよ。

シュウペイ 伊達(みきお)さんと富澤(たけし)さんね。

松陰寺 そう(笑)。で、お二人とお話ししているなかで『ライブをやったほうがいいよ』みたいなことを言っていただいたんです。サンドさんもあれだけテレビに出ながら、毎年必ずライブをやっているらしくて。

シュウペイ 全国ツアーをやってるって言ってたよね。

松陰寺 その言葉を聞いて、僕らもやろうかなって思ったのが最初のきっかけでした。2020年は忙しくてできなかったんですけど、昨年の春くらいかな? もうちょっと前だったかもしれないですけど、やろうと決めて。

――シュウペイさんも同じ考えだったんですか?

シュウペイ 正直言うと、単独ライブって大変じゃないですか。ネタもめちゃくちゃ憶えなきゃいけないし。だから、最初に(松陰寺から)聞いたときは“あぁ、マジかぁ”って思いました。けど、ファンの人と会えないし、ネタを生で披露する場がないっていう、このご時世の影響が大きかった。営業があればネタも披露できたり、ファンの方にも会えたりしてたんでしょうけど、1年間なんのイベントもできず、ファンの人とお会いする機会もなかったことで、単独をやろうっていう決心がついたというか。せっかくたくさんの人がファンになってくれたんだから、感謝の思いを込めてやろうと思ったんですよね。

――SNSでファンの方からリプライをもらうことはあっても、テレビに出ているだけだと直接の反応はなかなか得られないですもんね。

松陰寺 だから、本当に有名になれたのかな?って思ってました。

シュウペイ テレビの番組も(感染拡大防止のために)観覧の方を入れてないので、歓声を浴びないまま、1年過ごしちゃいましたからね。

「来年もやりたい」は本音だけど、ちょっと不安

――あぁ、なるほど。で、単独ライブ開催を決めてからすぐ、松陰寺さんはネタ作りに取り掛かられたんですね。

松陰寺 最終的に10本くらい作ったのかな? その中からネタをチョイスしていったんですけど、とにかく稽古の時間がなくて。台本にしてから稽古して、ちょっとずつネタを変えていくっていうのが僕らのネタの作り方なので、台本ができた時点での完成度は30~40パーセントくらいなんですよ。だから、稽古して修正していかなきゃいけないんですけど、時間がないから“間に合うのかな”と不安に思いながら準備してました。テレビの収録3本が終わったあと、サンミュージックの会議室に戻ってきてから1~2時間、練習したりして。

シュウペイ ネタは相方が作っているので、徐々にできたネタからちょっとずつやってたんですけど、仕事終わりで二人ともクタクタな状況で稽古をしても頭に入らなかったり、途中でネタが飛んだりしちゃって。しかも、単独ライブのネタって1本7~8分あるので、練習だと10分くらい(ぶっ通しで)やることになるんですよ。その1本、稽古するだけでもクタクタになっちゃうから、短期集中でやろうと決めてやってました。

松陰寺 マネージャーに、稽古日は他の仕事も調整してもらったこともありましたね。しかも、誰に見せるわけでもないから、このネタで本当に大丈夫かなって不安になったりもして。

シュウペイ けど、ふたりでこれ面白いじゃんって笑うこともあったので、いい雰囲気では出来ましたし、本番の出来が1番よかったので安心しました。

――コロナ禍なので100パーセントではなかったですが、満員の客席を見たとき、どんなことを感じましたか?

松陰寺 最初に客席を見た時、感動しました。お客さんから“待ってました”っていうような拍手をもらったんですけど、こちらこそ待ってましたっていう感じで。

シュウペイ 始まる前、お客さんが入る前のガラガラの客席を見た時、広いなと思ったんです。けど、お客さんが入っていると、きゅっとして見えたというか。一体感がありましたし、ライブ中はお客さんの歓声に助けられたところもありましたね。

――エンディングで、シュウペイさんは「また来年もやりたい」って言ってましたね。

シュウペイ 本番を迎えると、やっぱり漫才やってる時って楽しいなって思うんですよ。だからあの言葉は本音だったんでしょうけど……今はあぁ、今年もやるんだぁってちょっと不安です!(笑)

松陰寺 あははは!

シュウペイ もともと、やりたくて芸人を始めたわけじゃないっていうのもあるからか、ネタ合わせが苦手なんですよねぇ。けど、本番に1番いい状態を持っていきたいっていう気持ちがあるから、やるしかないなって思ってやるんですけど。

松陰寺 あれでしょ。準備期間はシュウペイのコピーにやってもらって、記憶を引き継いで本番だけやりたいってことだよね?

シュウペイ 本当はね。けど、練習をやろうって言われて断ることはないよね?

松陰寺 ない。いつも僕からネタ合わせしようって言うんですけど、今日はしなくていいって言われたことはないです。

シュウペイ 昔はありましたけど、今はやらなきゃいけないって思うようになりましたから。

ぺこぱさんへのインタビュー記事は、2月12日発売の『+act. (プラスアクト) 2022年3月号』に全文掲載されています。