オアシスを推すやつが嫌いだからブラーを応援した
――我慢して聴いたり、我慢して好きになろうとしたものが多いですよね。ブラー(※)も全然好きじゃないのに応援してたって本に書いてありましたし。
永野 そう! 無理やりね。僕ね、ずっとバカにしてるやつがいたんです。そいつはすごい頭がいいやつで、大学行って、野球とかもやってるようなやつ。でも、「TRAIN-TRAIN」とか聴いて心底盛り上がってるんで、なんてこいつは文化的にはレベル低いんだろうって思ってて。
僕はそいつに、いつも「ニルヴァーナとか聴いたほうがいいよ」って言ってたんですよ。そしたら悔しかったのか、オアシスの1枚目(※)かなんかのライヴの映像を見せてきて、そいつが「俺が見つけてきた」みたいな顔して紹介しだしたんですよ。そいつが推薦してきたっていうのもイヤだったんだけど、歌がすっげえ退屈で。「みんなの歌」みたいな感じじゃないですか。カートみたいな悲しみとかもないし、歪んだギターとかでもないし、ギターもダサいんですよね。
(※)ブラー……英国のロック・バンド。90年代前半のブリット・ポップ・ブームのときにはオアシスと人気を二分した。
(※)オアシスの1枚目……94年発売の『オアシス(Difinitely Maybe)』のこと。「史上最高のデビュー・アルバムの一つ」とも言われている。
――カートのギターの持ち方に比べるとポジション(※)が高いですしね。
永野 そう! こっちはシド・ヴィシャス見てるからね。ベースのポジションが床スレスレ(笑)。普通はそっちがかっこいいだろって。KORNのフィールディーとか。その点オアシスは泥棒みたいな顔のやつが、ドリカムみてえなポジションで弾いてる。なんだこれって思って嫌いになって。「モーニング・グローリー」とかもさ。
(※)ポジション……ギターやベースを抱える位置。胸の位置が弾きやすいのだが、腰より低いところで、ダルそうに持つのがカッコいいとされていた時代があった。
――めちゃくちゃいい曲じゃないですか。
永野 うん、まあ、曲はいいんですけどね。オアシスってすごく太いこと言うじゃないですか。そのくせ真面目な音楽で、ビッグマウスと音楽がともなってないじゃんって。あと、貧乏な家庭のやつが成り上がって有名になるみたいな流れも、ありきたりすぎて嫌いでしたね。とりあえずオアシス好きって言ってりゃOK!みたいなやつも多すぎた。だから僕はブラーに肩入れしてたんです。
――音楽性とは全然関係ないところで(笑)。
永野 レディオヘッドも同じ感じですね。「パラノイド・アンドロイド」とか僕、大好きなんですけど、みんな『キッドA』(00年:※)から好きになるのは絶対ウソじゃん!と思って。それなのに誰もが『キッドA』が最高だ!って言うでしょ? 去年、YouTubeの番組のディレクターさんに『キッドA』借りて聴いたら、ホント予想通りの音だったんですよ。「あー、はいはい」みたいな。でも最近のトム・ヨークの姿見たらボロボロになってて、それ見たらなんか好きになりました(笑)。こいつ本物だったんだ、みたいな。
(※)『キッドA』……レディオヘッド4枚目のアルバム。実験的なサウンドで「2000年以降のロックを大きく変えた金字塔的作品」と言われる。
――音楽、ホント関係ない(笑)。でも、永野さんの聴き方って、ある意味優しいんですよね。曲をピンポイントで評価するんじゃなくて、そのアーティストの人生とか顔つきとか思想とかも含めてトータルで見てるから。理不尽に嫌われてる人はたまったもんじゃないけど(笑)。
永野 確かに「なんか違うな」と思ってからも、U2は『POP』(97年)まで好きでしたし。98年の『ポップマートツアー』は僕、見逃してるんです。その頃、ホリプロに所属してたんですけど、事務所のどうでもいいネタ見せライブがあって、そっちに行っちゃってね。今でも後悔してるんです。
で、そのあとの『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』(00年)が出た時の『CROSSBEAT』が「U2が戻ってきた!」みたいな書き方をしてたんだけど、聴いてみたら「“戻ってきた”は違くね? 柔らかいロックになってるな」と感じたんですよ。自分にとってのU2は『WAR(闘)』みたいな闘うロックだったんで、『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』で、もうU2は“あがり”かなと自分の中で思ったんです。
≫≫≫ 明日公開の後編へ続く
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