生き残る・生き残らないは、結局「芸」

――吉本には才能豊かな若手が多いですけど、彼らの活躍はどういう気持ちでご覧になっていますか?

矢野 やっぱり「新製品」って強いじゃないですか。僕らの場合は、旧製品をいかにバージョンアップしていくかというところです。スマホで言うとOSを新しくしていかなあかん。ただ、若手と一口に言っても通好みもおりますけど、本当にいろんなタイプがおりますし、種目が違うというか。たとえば、長距離の選手がなんぼ短距離の練習したって勝たれへんじゃないですか。自分の種目のなかで最高を目指していくしかない。

だから、若手に対しては「こんなん、今だけやわ」とも思ってないし、自分らはそこに負けないよう、それこそパソコン古いけど、どんどん新しいものイントールしてバージョンアップしていくしかないですね。

兵動 やっぱり若さっていうのは最大の武器ですが、芸人で今、残ってる方はそれ以上のものを持っていたからこそ残っている。だから若手には、いっぱい好きなことをやって、どんどん劇場にもお客さん呼んでもらって頑張ってほしいというところはある。あと、僕はなんか勘違いしてた部分もあって、コロナになる前は歳とってもおんなじように活躍できると思ってたんですよ。でもコロナ挟んで、おっさんになってきて、もうちょっと嘘つかれへんというか。ノリとかではなくて、もっと深み出すとか、自分がどうありたくて自分がどういう芸人になりたいかっていう方向を深めていって、それで50歳になったときに、あんな芸人になってたらうれしいなと思われたい。

「ああ、矢野・兵動、あまりキャーキャーワーワー言われへんけど残っとんな、笑いとっとんな。俺らもあの歳になったら、ああやって笑いとれたらええな」っていうところを目指していけたらいいし、それを今頑張ってくれてる若手が気づかせてくれたから。

矢野 さっき「師匠の背中をまだ見れる幸せ」って言うたけど、僕らもほんまに見てもらえるような男、芸人にならんとあかんでしょうね。

――お二人とも劇団を主宰したりトークライブをやったりと、漫才以外の活動もなさってますね。兵動さんはNHKの朝ドラにも出演されていますし。それはやっぱり、経験が全部漫才に集約されていくという考えのもと、していることなんでしょうか。

▲芸についての話の一つ一つに説得力があった。

矢野 頭使って苦労せんと錆びてまうしね。やってきたことって漫才に絶対生きてくることだと思うんです。別のことをやることで人脈も広がったりする。そういう意味では、劇場の出番もあるしちょこちょこテレビに呼んでもらって、収入もこんだけあって、このまま病気もせんでいったら、「これでええやん」ではない。自分を追い詰めておいて、やっとボルテージを高められるんじゃないかという気持ちはありますね。そこまでやって、やっと僕売れてるんですよ、きっと。

兵動 僕は売れる・売れない、生き残る・生き残らないは、結局「芸」だと思ってて。その芸の質とは何かというと、説得力だと思うんです。たとえば、「この前、あっちでね」って言うのも、近くで指すのか遠くの方で指すのかっていうので、お客さんの頭の中で絵の浮かべ方って変わると思うんですよね。そういうことを考えたときに、演技ってすごいな、と。「間と説得力=演技」だと思うので、自分もドラマとか芝居で演技っていうものを勉強させていただいている、というか。すごい俳優さんたちのような演技はできませんけど、やってない僕とやった僕とではだいぶ違うんじゃないかと。そういうのでちょっとお芝居やらせてもらってるんです。

――ご自分を芸人だなって感じるときはどんな時ですか?

兵動 それで言うと僕、たぶん芸人じゃないと思いますね。裏方気質なんです。昔の芸人さんだったら、「呑む・打つ・買う」とか破天荒っていうのがありますけど、そういうのもないし。俺たぶん、一番芸人に向いてないんちゃうかなって思います。楽屋とか見てると、みな芸人らしいんですけど、僕はいたって普通なんです(笑)。

――矢野さんから見ていかがですか?

矢野 あの、要するに芸人っていうのは、若手でも「芸人ごっこ」というか、無茶する風情が芸人なんだ、みたいな間違った芸人観を持ってる人がおったりもするんですよね。

――いわゆる旧式のステレオタイプですね。

矢野 そうなんですよ。そういうやつもおるんですけど、たとえば兵動さんは職人というか、舞台ではまったくの芸人なんですけど、楽屋では無口なんですよ。仲良くならんと喋りかけないし。逆に言うと、僕の中ではそれが芸人だなって思う。だから僕の中では憧れの芸人さんですよ、兵動が!

 

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