カバが怒って突進!

―― サバンナの大自然で働いて約7年になると思うんですが、土壇場と言いますか、危険な目にあったことはありますか?

太田 死ぬかも?って思ったことが、一度だけあります(苦笑)。見習い時代のオフに、ガイド仲間と2人で散歩していたんですね。そしたら、ちょっと離れた水場にカバがいたので見に行ったんですけど、近づきすぎてカバが猛烈に怒って水場から出てきたんです。

実は凶暴なカバ(写真:本人提供)

―― カバって実はすごい狂暴だって聞いたことがありますが……。

太田 そうなんですよ。本気で走ったら、スピードもかなり出ますからね。もう2人して全力のダッシュで逃げました。

―― 今、無事でいるということは、事故は起きなかったということですね。安心しました(笑)。

太田 20メートルくらい逃げたとは思うのですが、あまり記憶にありません……。ものすごい長く感じましたが、あっという間の出来事でした。どこかのタイミングでカバが引き返してくれたんだと思います。

―― 無事でよかったです。

太田 乾季で水の量が少なくて、カバがかなりストレスを感じている状況だったことも、理由のひとつだと先輩のガイドに聞きました。水の中は、カバにとって一番安全で安心できる場所なので、そこからわざわざ出てきて人を襲うことは考えにくいことではあったんですが、野生の動物相手では細心の注意が必要なんだと学びました。

―― サファリガイドのお給料についてはいかがでしょうか?

太田 南アフリカでは、サファリガイドになる前に見習い期間を経ることが多いです。お給料が出ない時期が3~6カ月ぐらいあって、そのあいだに働きながら経験を積み、会社に対してアピールしていくのが一般的です。

―― 外国人がなろうとすると、かなりハードルが高いかもしれませんね。

太田 私もなかなか職場を見つけることができなかったんですが、Facebookがきっかけで就職することができたんです。

―― お金というより、やりがいや好きなことやっている満足感、達成感があるから続いているのでしょうか?

太田 正直、お金持ちになりたい人はやらないほうがいい仕事ではあるかもしれません(苦笑)。でも、それ以上に素敵な気持ちにさせてくれる仕事ですし、私たちが忘れてしまいがちな、「人間も自然の命の輪の一部である」ということを意識させてくれるのもここサバンナ。

私もできれば、おばあちゃんになるまで働き続けたいと思っています。

≫≫≫ 明日公開の後編へ続く


プロフィール
太田 ゆか(おおた・ゆか)
1995年3月13日アメリカ生まれ。幼い頃から動物好きで、大学時代の留学をきっかけに、環境保護に関わる仕事に就きたいと決意。サファリガイドの勉強のため、20歳の時に南アフリカへ渡りサファリガイドの訓練学校に入学。現在、南アフリカの公認のサファリガイドとして、唯一現地で働く日本人女性。コロナ禍で観光客が激減する中、「バーチャルサファリ」を配信するなど新しい試みにも意欲的。Instagram:@yukaonsafari、YouTube:『Yuka on Safari』、オフィシャルサイト:「Yuka on Safari