20代前半に単身南アフリカに渡り、サバンナで暮らしながら、環境保護活動に取り組む日本人女性がいる。太田ゆかさん(27歳)は、南アフリカ政府が公認するサファリガイドとして働く、ただ一人の日本人だ。幼い頃からの動物好きが高じてアフリカの大地に立つことになったという彼女に、「好きを仕事にすること」について話を聞いた。
大草原の糞(フン)から動物探し
―― 今日はよろしくお願いします。太田さんは今、どちらで働かれているのでしょうか?
太田 はい。南アフリカ共和国北東部のリンポポ州にあるクルーガー国立公園で、付近にある一軒家でルームシェアをしています。
―― お仕事は、日本女性ではただ一人だというサファリガイドです。なぜ、その職業を目指すことになったのですか?
太田 幼い頃から動物好きで、野生動物保護の仕事をすることが夢でした。大学2年のときに初めてアフリカのサバンナで環境保護ボランティアに3週間参加したのですが、アフリカの自然に圧倒され、そこで働いていたサファリガイドに憧れを持ったのがきっかけで、もうアフリカに渡って6年半になります。
―― そちらで働いている日本人は太田さん一人ですか?
太田 男性の方だと、私よりも前に同じ資格を取った方がいらっしゃるんですが、今は日本に戻られているようです。ありがたいことに、数年前からちょこちょこメディアで取り上げていただいたことがきっかけで、サファリガイドを目指す日本人女性も増えています。私も学校につないだりしつつ、実際に資格を取得された方もいるんですよ。
―― ガイドになる競争率は高いのでしょうか?
太田 そうですね。というのも、サファリガイドは南アフリカでは人気の職業のひとつだからです。ですから、外国人でガイドになれる確率はとても低いと思います。私の感覚では全体の5%くらいでしょうか。とはいえ、意外と激務ですぐ辞めてしまう人も多く、空き自体は定期的に出ます。
―― 狭き門なのですね。具体的なお仕事の内容を教えていただけますか?
太田 人と自然をつなぐっていうのが一番の役割だと思っています。世界中から野生動物を見たい、自然を体験したいという方たちをサファリカーに乗せて、サバンナに向かいます。そうして見つけた動物について理解してもらうことが大事です。
ただ動物かわいいでしょ、すごいでしょうって見せるのではなくて、その動物がどういう役割を生態系のなかで果たしているのかとか、今その動物が置かれている環境、どんな保護が必要なのかといった、環境保護についても学んでもらえるようにガイドするのが、大切な仕事になります。
もちろん、相手は野生動物なので、動物園と違ってどこに行ったら何がいるっていうのはなく、基本的に探偵のようにして動物が残していくフンだったり足跡だったり、いろんなヒントを辿りながら見つけるのが、まずは必要なスキルとなります。
―― フンですか?
太田 そうですね。フンがまだ柔らかかったらその動物が近くにいるはず、といったように、いろいろな情報をヒントにします。