久場島にミサイルを配備されたら台湾は終わり!?
エルドリッヂ たとえば、観光客を装って民兵を台湾に送り蜂起させる。台湾単独でも1週間、あるいは2~3週間は持ちこたえられるかもしれませんが、他国軍の派遣がなければ制圧されます。しかし、それを事前に防ぐために中国は、沖縄の在日米軍を麻痺させる行動にでるでしょう。
たとえば、那覇空港を中国の民間機二機で一時的に占拠し、空港を使えない状態にする。その間に尖閣を占拠する。
元航空自衛隊空将で麗澤大学の織田邦男教授がよく言うことですが、尖閣のほかの島と比べて平坦な地形の久場(くば)島に、中国軍がS400地対空ミサイルを配備したら終わりです。
S400は世界最強の地対空ミサイルと言われ、400km先の6目標を同時に攻撃でき、ステルス機や弾道ミサイルにも対処可能です。中国は、これを8セット保有しています。
したがって、S400を久場島に配備すれば、沖縄本島の米空軍嘉手納基地は射程圏内に入り、無力化される。中国が台湾周辺の制空権を奪取するには、嘉手納基地の無力化は絶対必要条件ですから。
しかも、その久場島に中国が、平時のうちに海上民兵を使ってS400を搬入すれば、自衛隊は手を出せません。
海上民兵は普段は漁船でやってきます。中国海警局が先導して領海侵犯した場合、対応は自衛隊ではなく海上保安庁なので、民兵が上陸して荷揚げをしていても、取り締まるのは海上保安庁か警察となります。
石平 中国は2021年の2月に「海警法」を改正し、平時でも武力行使が可能となりました。また、約75万人の海上民兵がいると言われ、漁船を装った武装船も14万隻あるとのことです。
エルドリッヂ 日本は平時における武力行使を定める法がないため、対応できないのです。したがって、久場島に設置されたものがS400とわかった時点で、嘉手納の米空軍は横田・三沢・グアムまで後退し、那覇基地の航空自衛隊戦闘機も、本土に後退せざるを得なくなる――というのが織田教授の見立てです。
これら全ての条件が満たされなければ、中国の台湾侵攻は成功しないかもしれませんが、逆に台湾を守る側にも同じことが言えます。すべての条件が満たされなければ、うまく台湾を守ることはできないのです。
※本記事は、石平×ロバート・D・エルドリッヂ:著『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。