日本を救うために消費税減税・凍結は必須

――日本経済の不安定さがわかりましたが、現状況における岸田政権の対応はいかがですか?

藤井 全く評価できません。一般的に物価上昇が深刻化している場合、政府が物価を引き下げる努力が必要です。最も効果的な方法は、全品目の価格を引き下げることができる消費税減税ですが、それをやっていません。

また、特に価格が上がっているガソリン価格についても、暫定税率の凍結を行う仕組みがあるにもかかわらず、それすら行っていません。一応、ガソリン元売り業者への補助金給付を行っていますが、その給付金の全てがガソリン価格引き下げに転嫁されることはないため、その効果は限定的です。

――スタグフレーション化した今の日本を救うため、政府どのような政策を講じるべきですか?

藤井 賃金下落対策を進めながらインフレ対策を行う必要があります。まずインフレ対策としては、消費税やガソリン税の減税は必要不可欠。それと同時に、賃金下落対策のために内需拡大が重要になります。最も効果的な方法は、やはりここでも消費税減税・凍結です。これで消費や投資が一気に拡大し、コアコアCPI、そして賃金が上昇して好景気がもたらされます。

――消費税を引き下げるだけでも大きく変わりそうですね。

藤井 他にも、さまざまな項目における政府投資の拡大が有効です。例えば、エネルギー・IT・交通・防災・食料などのインフラ、人材育成など、これらはいずれも日本の国益を守るために必要不可欠なものです。それらにしっかりと政府投資をしていけば、自ずと内需は高まり、賃金下落が食い止められます。

――インフラが整備されれば、ウクライナ問題や新型コロナコロナウイルスのような有事が起きても対応できますね。

藤井 そうです。もちろん、インフラだけでなく国民にも投資をする。貧困層を中心とした世帯に対する補償給付も効果的です。これらを全て行った場合、最低賃金の引き上げも効果的でしょう。

参議院選挙で注目すべきポイント

――「日本はもう経済成長しない」という雰囲気が根強いですが、日本は成長の可能性があるのですね。

藤井 ただ、現政府は先述した内需対策を行わず、最低賃金引き上げ対策のみを進めようとしています。ただ、これは最低の愚策です。現在の状況下で最低賃金引き上げを実施すると、給料を払えない企業は続々と倒産し、不況圧力が余計にかかります。必要な政策を講じず、不必要どころか、ますます日本経済を追い込む政策を講じる政府はとても看過できません。

――政府のやるべきことはわかりましたが、私たち国民はこの物価上昇、スタグフレーションにどのように備えるべきですか?

藤井 先述したような政策を実行しない政府を批判し、正しい対策を実行する政治家や政党を選挙などで支援し、政府の政策を矯正していくことが最善の道です。

▲参議院選挙で注目すべきポイント イメージ:Ystudio / PIXTA

――参議院選挙が迫っているので絶好のチャンスですね。ただ、裏を返すと、適切な政策を講じない政党や政治家を選んでしまうと、より一層生活が困窮するかもしれません。参議院選挙では、各政党や各候補者のどのような発信に注目すべきですか? 

藤井 やはり、消費税やガソリン税について、どのような立場を示しているのかは注目すべきです。また、政治投資の拡大や貧困層に対する直接給付も重視しましょう。加えて、消費税減税や政治投資拡大を阻む元凶である「プライマリーバランス(PB)黒字化」を推進する政党や候補者にも要注意です。

――「プライマリーバランス黒字化」は、なぜダメなのですか?

藤井 「プライマリーバランス黒字化」は、わかりやすく言うと「政府の借金を返済すること」を指します。ただ、日本は自国通貨である円を発行できるため、政府の借金を「完済」する必要はありません。むしろ“政府の赤字の増加は、民間の黒字の増加”ですので、国民の所得が増えていない状況下、つまりは今現在「プライマリーバランス黒字化」を進めると、ますます私たちの生活は困窮するでしょう。

ですので、きちんと「プライマリーバランス規律の凍結」を表明しているかも注視しなければいけません。また、コロナ禍の経済対策として繰り越された30兆円もの補正予算を即時執行するのかどうか、といったポイントも抑えておくべきです。