避難民を“駅”から逃すのは危険が多い

桜林 2022年4月8日には、東部ドネツク州のクラマトルシク駅に、ロシア軍がSS21(トーチカ自走式戦術弾道ミサイル)を撃ち込んで子ども5人を含む一般市民52人が死亡し、109人が負傷するというニュースがあって驚きましたが、どうご覧になられましたか。

小川(陸) クラマトルシク駅はマリウポリの北に位置し、ウクライナ軍が反撃を実施するために必要となる兵站物資や、兵隊を運ぶ重要な拠点になります。そもそも駅というのは固定化されている建物なので、ロシア軍は射撃目標として評定していたはずです。報道などでは、クラマトルシク駅上空で弾道ミサイルの9N123クラスター弾頭が起爆し、最終段階で散布された金属球によって一般市民が死亡したとのことです。

ウクライナ鉄道の代表は、弾道ミサイルが駅周辺に2発飛来し、さらに目撃者の証言では5回から10回の爆発音があったとのことです。これが事実とすると、極めて非人道的な攻撃です。弾道ミサイルから金属片が散らばり、駅周辺一帯にいる人々を殺傷するのが目的であり、まさにウクライナ人の意識を屈伏させるような意図を感じます。

一方でウクライナ側も、駅から避難民を逃がすのではなくて、本来はもっと狙われない場所、たとえば駅以外の途中の線路沿いから乗車する、もしくは道路を使ってバスなどで住民避難を行うべきだったかと思います。この事象は、日本にとっても今後の住民避難の教訓として学ぶべきだと思います。

桜林 そもそも主要な駅は狙われやすい場所だったということですね。

▲クラマトルシク駅(2019年) 出典:Visem(ウィキメディア・コモンズ )