暗闇と焚き火で悟りを開く
私はこの事実に想いを馳せる。騒々しいお笑いの仕事場とは真逆のキャンプ場に。
メンテナンスのいきとどいたキャンプ道具を車に積みこみ、車を運転して山に入る。自分だけのスペースを見つけて、テントを張り、環境を整える。焚き火の準備をして薪を火にくべる。その火を活用してコーヒーを飲み、ちょっとした料理を作る。
気がつけば、周りは暗くなっている。
焚き火をただただ眺める。静かだ。見上げると空には満天の星。そして目の前にはゆらめく炎。
火を消せば漆黒の闇が辺りを包む。だが、こんな暗闇でも自分は生きてる。過酷な自然のなかでも、キャンプ道具さえあればサバイブできる。何が怖い? 怖いものなど何もない。火さえあれば生きていけるじゃないか……。
そしてYouTubeを撮る。それが再生回数を稼ぐ。そして少なくない収入になる。その思考の先に絶対にこういう答えがある。
「事務所って必要……?」
これです。
もちろん事務所が取ってきてくれる仕事もあるし、反社チェックや請求書の発行など、面倒なことを全てやってくれるというメリットはある。
しかし、キャンプ芸人は強くなりすぎた。
直に自然と触れ合い、直で火を起こし、地べたに直で座る。彼らは直で生きてるのだ。山の闇でも生きていける男たち。キャンプの世界に中間搾取は何もない。
少し離れたところで、互いのテリトリーを荒らさないよう気を使いながらテントを張るキャンプ芸人と目が合う。そしてお互いに頷く。
嗚呼。
各事務所は気をつけてほしい……キャンプ好きは間違いなく「独立のサイン」だ。僕は以前、阿諏訪に「キャンプに連れてってくれよ!」と頼んだことがある。
阿諏訪はこう言った。
「必要なキャンプ道具を買ったらいいですよ。いろんな人に言われるけど、僕が全部やるのは面倒なんですよね。自分で用意したほうが楽しいです。用意してくれたらいいですよ」
今思えば、あれは阿諏訪なりの優しさだったのかもしれない。
用意が面倒というのは嘘。
「一から自分で用意しないと、山の中で生命を直に感じれないですよ……」
そう言っていたに違いない。彼らは私たちの先を松明で照らしてくれる。それがキャンプ芸人……。まさに火を見ながらFIREの境地に達した人たち。
阿諏訪に勧められたmont-bellのリュックを買いに行こうと思う。
(構成:キンマサタカ)