黄色くて丸い存在、絵文字以外にもけっこういる?

日本のパックマン

日本のキャラクターで「黄色くて丸い」と言えばパックマンが有名です。

パックマンは1980年に開発されたゲームのキャラクターですが、そのクリエーター岩谷徹によると、そのデザインの着想は「食べる」から得たそうです。口という漢字を丸めた結果、丸いキャラクターが出来上がりました。目や髪の毛を加えることも検討されたそうです。(“Programmers at work”, pp. 265-266)

また、黄色はゲーム画面で一番大きく見えるという理由で採用されました。

図1 パックマンのデザインに関する岩谷徹のメモ
(出典:Susan Lammers “Programmers at work” Tempus Books, 1989, p. 262.)  


ロシアのコロボーク

筆者の母国のロシアにも、実は絵文字に負けないぐらいのキャラクターが、むか~しむかしからいました。ロシアの昔話に『コロボーク(おだんごぱん)』というのがありますが、主人公は黄色くて丸いパンです。どうですか? 黄色いスマイリーフェイスにそっくりですね。

図2「コロボーク」本の表紙
(出典:Колобок. Школьная книга, 2015)

主人公コロボークは家出し、いろいろな動物に会って食べられそうになりながら、ころころと先に進んでいきます。そして最終的にキツネに食べられてしまうというあらすじです。

イギリスにも似たような昔話があるんです。こちらの主人公はJohnny-Cakeといって、パンケーキのようなキャラクター。手足が付いていてコロボークとは微妙に雰囲気が違いますね。

図3「ジョンニ・ケーキ」本の表紙
(出典:Joseph Jacobs, Johnny-cake. Nystrom, 1990.)  

ちなみに、ロシアでは、2000年代にインスタントメッセンジャー用に独自の絵文字が開発されて、一時期かなり流行っていました。このロシア版の絵文字も昔話のキャラクターにちなんで「コロボーク」という名が与えられました。
〈コロボークの絵文字:http://www.kolobok.us/content_plugins/gallery/gallery.php?smiles.2

コロボークというキャラクター名は、日本語訳では「おだんごぱん」になっていますが、おだんごといえば、日本にも「だんご3兄弟」がありますよね。そろそろキリがないので、ここら辺でやめておきます(笑)。

今回は身近な国の文化のキャラクターを例に見てきました。こうして見ると、「黄色くて丸い」デザインは普遍性を持って、いろいろな国や文化にあることがわかります。このような普遍性が、黄色くて丸いスマイリーフェイスが世界中で愛されている理由の一つでしょう。

『絵文字進化論』は次回3/11(水)更新予定です、お楽しみに。