LGBTQ+や出産などテーマが重くて難しさがあった
――最新出演作となるAmazon Original連続ドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』は、愛し合う男性同士と、それを見守る一人の女性の日々を綴る物語です。題材や設定に難しさがあったと思いますが、最初に台本を読んだ印象を教えてください。
中川 同性愛や出産のことなどテーマ自体が重くて、台本を10話まで読んで本当にこの作品に自分が携わるのか……と思いました。ただ、それぞれの役柄を見ると、本当に優しいキャラクターたちによって作品が成り立っていると感じたので、この優しい世界観をしっかり作っていきたいと思って。その想いを台本に書きましたし、誰かのためを想いながら生きている姿を読み取って、自分もそうありたいという気持ちを演技の軸にしました。
――中川さんが演じた永慈は、同じ男性である槙雄(青木柚氏)に恋心を抱く大学生ですが、彼の人間像をどう理解しましたか?
中川 ひとりの人間として、彼が育ってきた環境や考えていることに関しては、ものすごく理解できたんです。永慈の実家は裕福で、特に大きな壁にもぶつからず、他人から弊害を受けずに生きてきた。自分も似たようなところがあるんです。
それがある種のコンプレックスでもあるのですが、だからこそ人に対して優しくもできる。作中にも、「自分は恵まれ過ぎているので、これ以上望んでしまったらバチが当たる」みたいなセリフがあるんです。そういう部分にも人間像が現れていて共感しました。
――その一方で、同性愛者という部分への理解・解釈はどうでしたか?
中川 やはり、その部分はちゃんと理解しなければいけないと思い、撮影に入る前にLGBTQ+の監修の方からお話を聞いたりしました。当人にしかわからない悩みや、苦しみを抱えながら生きていらっしゃる方もいるかと思うのですが、昔よりも受け入れられる時代にもなってきたのかなとは思います。
セリフにも、今どきの子だからカミングアウトしても大丈夫かなと、という状況もありますし、そういうことも含めて、なるべく現代の同性愛者の感覚を大切にしました。
――ちなみに、中川さんの世代は、LGBTQ+に対して理解があると感じますか?
中川 偏見などはなかったと思いますし、多様性を大切にしていこうという考えのなかで生きてきた世代だと思います。好きなものを好きだと認めていく、という感じで。ただ、いろいろな人のいろいろな価値観があるので、この話題は本当に難しいと思います。
――LGBTQ+の監修の方とお話をされて、印象に残っていることはありますか?
中川 何人かとお話をさせていただきましたが、やはり人それぞれだなと。例えば、家族がフランクな人柄だったら、躊躇せず打ち明けることができたという方もいましたし、逆に直接は言えない人、言えないけど察してほしいという人もいたり、本当にさまざまなんですよね。
演じた永慈の場合は、家族がフランクな人ばかりなので大丈夫だと思っていたけど、実際は全然理解してもらえない状況がありました。そう考えると、自分の親に自分のセクシャリティを理解してもらえないのは、寄りどころがなくつらいですよね。
自分の素の部分を出すことができた
――物語では、槙雄に恋心を抱くことになりますが、彼のどういうところに惹かれていったと思いますか?
中川 最初はいきなり後ろから抱きつかれたり、そういうあざとい部分にドキドキしていたと思います。その後、正直に自分の気持ちを打ち明けますが、同性愛だとしても、それまでと変わらず接してくれたので、信頼を寄せることができたのかなと思います。
――永慈と槙雄、そこに美枝子(藤野涼子)が加わり物語が進んでいきます。三人の関係性が非常に重要なポイントになりますが、お芝居で心掛けたことはありますか?
中川 ドラマが進むごとに、どんどん三人の関係性が変わっていくんです。最初は槙雄と美枝子が仲が良いのですが、後に永慈と槙雄がどんどん仲良くなっていく。三人の関係性が状況によって変わっていくのがこのドラマの面白さでもあるので、見た目でも変化がわかるような工夫がされています。
例えば、最初のほうの永慈が自分の車を運転しているシーンでは、後部座席に槙雄と美枝子が座っているんですが、関係性が変わっていくと、その座り位置も変わっていく。そういう変化も見どころだと思います。
――登場人物全員が人間味あふれていますが、そのなかでも中川さん演じた永慈の人間性が鍵を握るのかなと。
中川 監督や共演者の方にも言われましたが、この作品は本当に永慈が魅力的じゃないと物語に説得力が生まれないんです。なので、男女どちらから見ても魅力的な青年になるように頑張りました。
良かったと思うのは、先ほども言ったように、永慈と自分との共通点が多くて、自分の素の部分を出すことができたというところ。永慈を見ると同時に、中川大輔ってこういう部分もある人なんだって知ってもらいたい。今回はそう思える役柄をいただいて、すごくうれしかったです。
――お芝居の部分で収穫はありましたか?
中川 『ボイスⅡ 110緊急指令室』のときはサイコパス的な人物、『花嫁未満エスケープ』では彼女に迷惑を掛ける男といった感じで、今までは攻めるお芝居が多かったんです。なので、誰かがアドリブでセリフを言っても、そこに自分も乗っかっていく姿勢でした。
でも今回は、完全に受けのお芝居だったので、だれかのアドリブも反応せずに傍観していたり、落ち着いて周囲を見ることができて。今まで攻めのお芝居が楽しいと思っていましたが、受けも楽しいと思えて新鮮でした。