今は「自分の好き」を追求できる多様性の時代

――0歳から魚を好きになり、15歳の頃に将来の道筋を見定めて、その後は専門家や研究者としてだけでなく、さまざまな分野とコラボしたり幼魚水族館を立ち上げ、まだ日の目が当たらない魚たちをプロデュースしています。ご自身の想いを形にし続けていると思いますが、最終的な理想の形とはどんなことになるのでしょうか?

鈴木 最終形は全く決めてないですが、20代での目標は水族館を作る、30代では学校を作る、といったキーワードだけを決めて活動してきました。20代の目標である水族館のオープンは実現できたので、次の10年は学校を実現するために活動していきたいですね。

ただ、常に自分がどうありたいかというと、プロデューサー的な立場なんです。魚の世界への入り口やきっかけを作る人、という役割を担っていきたいとは思っています。

――まさに有言実行していますし、自分の好きなことを仕事にしているわけですが、どうしたらそれを可能にできると思っていますか?

鈴木 自分がそうであるのですが、常に自然体で在りたいという心持ちかもしれません。先ほども言ったように、ブロンズヘアやセーラー服もキャラ作りではなく、本当の自分の姿をあらわした自然体。なので、今後もできる限り、中身も見た目も、ごくごく自然に「自分の好き」を追及していきたいです。

▲幼魚のことになると時間を忘れて楽しむ

――自分の好きを追求することって、簡単そうで簡単ではない部分もありますよね。

鈴木 周囲に何か言われたり、無理やり軌道修正させられたり、いろいろな弊害が生まれるのも事実ですよね。僕が子どもの頃は、まだ変わり者扱いされていて、全然仲間に溶け込めなくて、ものすごい孤独感もありました。

だけど、今はもう古い考え方という感じになって、それぞれの個性があって、それぞれの好きなものが認められる多様性の時代、好きを追求しやすい時代になってきました。ですから、今の時代の子どもたちは、あまり心配せずに好きなことを追求していけばいいと思います。

本当に良い時代だなって、羨ましいですよ。僕の子どもの頃に失われた数年間を返せ! と言いたい(笑)。でも、それによる反発心のおかげもあって、今こうして楽しめているのもあるんですが。

▲子どもの頃は変わり者扱いをされ孤独感を感じていた

趣味と仕事が100%合致、こんなに素敵なことはない!

――自分の好きなことを、ほかの誰かが「それもいいよね!」という価値観があるといいですよね。

鈴木 みんながみんな、その何かが好きを持っている時代ですよね。しかも、それをちゃんとサポートしてくれる人たちもいる。なので、好きを追求する気持ちをダサイとか思わないでほしい。とはいえ、時には大人や周囲から「趣味は仕事にしないほうがいい」と言われることも、まだまだあると思います。

でも、全部無視して大丈夫です(笑)。おそらく、そういう意見って半分は正解、半分は間違いだと思うんです。もちろん、そこに正解もあるので否定はしないですが、本当に趣味と仕事が100%合致したら、こんなに素敵なことはない! と自分自身が体験していますから。そこから生み出されるワクワク感とか作品は絶対に良いものになりますし、それが結果的に人々を惹き付けていくものになると思っています。

――ちなみに、香里武さんのご両親は、ご自身の活動を黙って見守ってくださっているという感じですか?

鈴木 うちの場合は、一緒に楽しんでいる感じです(笑)。普段はバラバラなことをしていますが、漁港に行くとなると家族3人が揃って、たも網をもって採集に行きます。特殊な活動なので、こんなに心強いチームはないんですよ。

▲漁港では親子で幼魚を採集している

――鈴木家の結束力がすごいですね!

鈴木 1時間くらい這いつくばって、何かモゾモゾしている3人がヤバい! と、とある漁港では名物な光景になっています(笑)。でも、それを気にせずに30年間やってきちゃった。ですから、周りの目を気にしない、というのも自分の好きを貫くためのコツかもしれませんね。


プロフィール
 
鈴木 香里武(すずき・かりぶ)
1992年3月3日生まれ。うお座。幼少期から魚に親しみ、専門家との交流や様々な体験を通して魚の知識を蓄える。学習院大学大学院で観賞魚の印象や癒し効果を研究した後、現在は北里大学大学院で稚魚の生活史を研究する。荒俣宏氏が立ち上げた海好きコミュニティ「海あそび塾」の塾長を務め、岸壁幼魚採集家として漁港に現れる稚・幼魚の観察を続ける。メディア・イベント出演、執筆、写真・映像資料提供等の活動をする傍ら、水族館の企画等、魚の見せ方に関するプロデュースも行う。 2022年7月に幼魚水族館をオープン、館長を務める。(株)カリブ・コラボレーション代表取締役。 名前は本名で、名付け親は明石家さんま氏。男物のセーラー服がユニフォーム。 著書 『海でギリギリ生き残ったらこうなりました。』(KADOKAWA) 『岸壁採集!漁港で出会える幼魚たち』(ジャムハウス) 『魚たちからの応援図鑑』(主婦の友社)等。Twitter:@KaribuSuzuki