科学×遊びを伝えられる番組が夢

――今後、こんなことをやっていきたいという展望は?

山崎 最近では多くの方に知っていただけるようになって。サインも「コマ博士」として求められるようになりました。コマは7年前から取り組んでいるんですけど、だいたい花が咲くまでに3年くらいかかったな、というのがそのときに得た知見です。

それでいうと、SFのほうがちょうど3~4年目になります。SFをテーマにした本はこれまで出していなかったんですが、いま書いている本が世に出て、SF博士と呼ばれ、テレビに出たりできるようになりたい、というのが近い将来の展望ですね。

 
▲小学校の卒業製作のテーマは科学

――『コスモス』という番組を見て、先生が影響を受けたように、ご自身で科学を面白く語る番組というのは夢としてありますか?

山崎 それはめちゃくちゃあります。夢の1つはまさにそれですね。大きな夢ですが、自分の名前が付いているような冠番組で、ある程度、連続して科学×遊びを伝えられる番組ができたら素晴らしいですよね。おもちゃで科学を学ぶみたいな教育番組はもちろんですが、いろんなエンタメを科学者なりの視点で斬っていくみたいな深夜番組でもうれしいです。

研究の知識をSF映画やコマなど「教育」に振ることで、小学生、中学生、高校生、そして一般の方の科学への興味や知識を、ちょっとでも広げて深めていくことができれば、それは間接的に日本全体の科学のレベルを上げていることになると信じているので。

▲中学校のコースターづくりのテーマは太陽系

――最後に、好きを仕事にし続けるために、一番大事なことはなんだと思いますか?

山崎 「好きなことをやり続ける」こと。好きなことがあったら、とりあえず、好きな部分だけでもいいから、やり続けたほうがいい。科学者になりたいなら、勉強ばかりするのではなくて、科学者のおいしいところ、楽しいところだけでもいいから、そこをまずは先に体験してしまったほうがいい気がします。どんな職業においても、イヤなことや面倒なことは必ずある。そこは手をださず、とにかく一番おいしいところだけすることで、嫌いにならずにすむ。

――それだと確かに純粋な気持ちを持ち続けられますよね。

山崎 そうやって「好きをキープする」ためには、もうひとつ、社会的なつながりを作ることがポイントかもしれません。同志というか、同じものを好きな仲間を見つける。学校など狭い世界ではなく、広い視野を持って。私もサイエンスキャンプで親友ができました。科学を共通言語として語れる、普通の学校では得難いような存在でした。そういう存在が、高校や大学でたくさんできたことで救われたような気もしたんです。

そして最後に、とは言っても好きなだけではダメなので、努力はしましょうと。理由なくする努力はつらいものですが、目指すものがあり、理由がはっきりしていれば努力もそこまで苦ではなくなると思うので。「好きをキープすることが、好きを仕事にし続けられる」ポイントにはなると思います。


プロフィール
 
山崎 詩郎(やまざき・しろう)
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻にて博士(理学)を取得後、量子物性の研究で日本物理学会若手奨励賞を受賞、東京工業大学理学院物理学系助教に至る。全日本製造業コマ大戦優勝を機に、科学と遊びを融合した「コマ博士」として超異分野学会特別賞を受賞。著作の講談社ブルーバックス『独楽の科学』は、科学館夏休み特別展示展、NHK等でのTV特番、『メタルコマキット』(幻冬舎)等の形になる。SF映画『インターステラー』の解説会を100回実施。SF映画『TENET テネット』の字幕科学監修や公式映画パンフの執筆、『クリストファー・ノーランの映画術』(玄光社)の監修を務める。Twitter:@shiro_yamazaki