ニーズの高い吉田選手がどんな契約を勝ち取れるのか?

【3】久しぶりの「日本人スター」ポジション

そして、個人的に一番気になっているのはこの点。多くの日本人選手がNPBからMLBへ移って活躍をするようになった2000年代以降、ヤンキースには、ほぼ必ず誰かしら日本人選手が在籍していました。

しかし、上表の通り、田中将大選手の退団以降2年間、日本人選手が一人も在籍していません。その結果、ヤンキースは日本ではほとんど取り上げられなくなり、国営放送や動画ストリーミングサービスでも、大谷翔平選手や菊池雄星選手との対戦時のみの放送……と、名門球団にとっては悲しい現状となってしまっています。

スポーツチームとしての知名度が世界一と言っても過言でないヤンキースが、稼ぎに困っているとは全く思えませんが、2003年の松井秀喜選手加入以来、安定的に取り込んでいた日本マーケットを、ここ2年間は完全に失っているので、それなりに痛手を負っているはずです。

もちろん、選手の能力、そして編成上のフィットが最優先ではあるものの、日本人選手との契約はヤンキースにとっても非常に望ましいはずです(※筆者がテレビでヤンキースの試合を見たいがゆえの、こじつけではございません)。

【4】契約は4年4,500万ドル?

さて、一番気になるのはここではないでしょうか。吉田正尚選手は、いったいいくらの契約を勝ち取ることができるでしょうか。

筆者の予想では4年4,500万ドル(年俸1,125万ドル)+チームオプション1年1,800万ドルの最大5年6,300万ドル(平均年俸1,260万ドル)の契約になると(勝手に)考えています。

比較指標として3つの契約(予想)を選びました。

  • 鈴木誠也選手(当時28歳)が5年8,500万ドル(年俸1,700万ドル)
  • ベニンテンディ選手(28歳)が4年5,400万ドルの予想(年俸1,350万ドル)
  • ミッチ・ハニガー(31歳)が3年3,900万ドルの予想(年俸1,300万ドル)
    ※Benitendi選手及びHaniger選手の契約予想はMLB Trade Rumorsのものを引用

鈴木選手は、2021年オフに27歳という若さで5年契約を締結し、期待値の高さから年俸1,700万ドルという市場予想以上の額を勝ち取りました。吉田選手も期待値は鈴木選手並みにある一方で、当時の鈴木選手より2歳年上(現29歳)である点を鑑み、最長でも4年契約かつ年俸はもう少し低いところが妥当かと思われます。

そして、年俸の参考指標として本記事で何度も取り上げているベニンテンディ選手、そして同外野手のハニガー選手の契約予想を見ましょう。両選手とも吉田選手と似たような役割期待を持たれているなかでのFA市場参戦ですが、いずれも年俸1,300万ドルが予想されております。

一方で、両選手はMLBで既に実績を残しているので、より高い年俸を勝ち取れる前提として考えた場合、吉田選手はそれより少し抑えた年俸になるのではないでしょうか。

以上を鑑みた場合、年俸1,150万ドルで4年契約、アップサイドとして最大5年の平均年俸1,260万ドルという水準は妥当かと思います。

数ヶ月後に答え合わせをしましょう!

背番号55の襷(たすき)を継承してほしい!

「ヤンキース史上最強の日本人選手は誰か?」と聞かれたとき、筆者は必ず「松井秀喜選手」と答えています。ヤンキースで通算7年活躍し、打率.292、140本塁打、OPS .852と高レベルの成績を収め、更に2009年のワールドシリーズで世界一を達成し、ワールドシリーズMVPに選ばる無双ぶりを発揮したことは、とうてい超えられないでしょう。

もし、吉田選手がヤンキース入りを果たした場合、同じ左打ち外野手として松井選手と比較されることは必然でしょう。もしかしたら、背番号55番を継承することもあるかもしれません。

その際はプレッシャーに負けず、私含め多くのヤンキースファンが10数年求めてきた「松井秀喜選手の後継者」として、飛躍をする姿をニューヨークで魅せてもらえることを心より期待します。ぜひブロンクスでお会いしましょう!

▲2020東京五輪での決勝戦 写真:長田 洋平 / アフロスポーツ

プロフィール
KZilla(ケジラ)
ニューヨーク・ヤンキース、およびMLBの魅力をTwitter、note、ラジオなどで発信し続ける注目の野球アナリスト。ニューヨーク育ちの英語力を活かした情報収集力と分析力は、コアなファンからも高い評価を得ている。オフシーズンに突入し、ヤンキースの選手補強が気になってしょうがないが、アンソニー・リゾの再契約が決まってひとまず安堵している。Twitter:@TokYorkYankees、note:KZilla|note