苦節20年、長かった下積み時代を歩んできた、おいでやす小田。長らく使用している年季の入った「ガス炊飯器」と、大は小を兼ねる万能食器「ラーメンどんぶり」 にまつわるエピソードを紹介。

見た目はアレでも有能な炊飯器

「引っ越し先にガス栓がなかったら、さすがに捨てようかなと思ってます。ただ、この炊飯器で米を炊くとバツグンにうまいんですよ」

ガス栓にホースをつないで、ガスで炊くタイプの炊飯器。これは21歳で一人暮らしを始めたときに、実家から持たされたものです。ただ、その時点で新品ではなかった気もするので、23年以上前からあったものかもしれませんね。

今でもずっと現役で使ってるんですけど、それはモノ持ちがいいとか、もったいないからっていうよりも、単純にこれで米を炊くとバツグンにうまいんですよ。電気とは火力が違うんでしょうね、土鍋で炊いたみたいに米がひと粒ひと粒しっかりしている感じ。後輩とかが家に来たときにふるまっても、「マジでうまい」って言いますもん。

▲長らく使用している年季の入ったガス炊飯器

ただ、もうすぐ引っ越す予定なので、新居にガス栓がなかったら捨てようかなと思ってます。テレビで有吉(弘行)さんと櫻井(翔)くんにこの炊飯器を見せたら、ドン引きされたんですよ。僕は「すげえ〜! 年代ものだね」とか、「こんなのまだ使ってるのかよ〜(笑)」っていうリアクションを期待してたんですけど、「いや、これはダメだよ……」って冷静に言われまして。

それで「あっ、これはさすがに見た目的にあかんねや。普通はこんなん、使えへんねや……」って気づきました。けっこうショックでしたよ。それまでは、なんの疑問もなく、機嫌よくご飯を食べてたんですけどね。

でも、新居にガス栓があったらどうしよう……。僕も捨てたいんですけど、とにかく言い訳がないとダメなんですよ。壊れたりしないと捨てられないのに、全然壊れない。だから、家にガス栓がないっていう言い訳がほしいんです。

金欠時代のトラウマ「シソのふりかけ事件」

この炊飯器の思い出というか、米で思い出すのは、15年くらい前に大阪のボロアパートに住んでたときのことですね。

芸人としては食えてないし、アルバイトもちょうど変わるときだったかなんかで2〜3か月収入がなくて、ホンマに何も食べるもんがないときがあったんですよ。2週間くらい、家にある米だけでしのぐしかない、みたいな。

米びつなんか買ってなかったんで、シンクの下に袋のまま米を置いてて、そのときもいつもみたいに袋からカップで米をすくおうとしたら、虫がおって……。「うわーっ!!」ってなったんですけど、2週間、食べるものは米しかない。どうしてもこの米は捨てられないってことで、カップで虫がいるところだけを捨てて、なんとか虫のことは忘れて食べようと思ったんです。

▲金欠時代のトラウマ「シソのふりかけ事件」 イメージ:PIXTA

それで、米を炊いたまではよかったんですけど、たまたま棚から、シソのふりかけが出てきたんですね。「うわ〜、こんなん買ってたんや。これでご飯がおいしく食べられる!」ってめちゃくちゃ喜んで、ご飯を茶碗によそって、そのふりかけをかけて食べようとしたら、シソの茎の部分が虫の足に見えてきたんですよ……。

シソのふりかけなんか、ちゃんと観察したことなくてわからなかったんですけど、ふりかけのシソって、葉っぱの部分と茎の部分に分かれてるんです。その茎が棒状になってて、「さっき捨てた虫が残ってたのかな?」って思った瞬間、もう虫にしか見えなくなって。

箸で葉っぱと茎と米を分けることにしたんですけど、分け終わったときには米がパリパリに乾いてました……。4時間くらい、汗だくになって米とふりかけを選り分けて、結局、食べられなかったっていう。そんなこともありましたね。