球団初のテレビCMも制作! しかし放送されることは……

私が関わったプロジェクトの中には、こんなものもあります。

2006年のオフに、松坂大輔投手がポスティングでボストン・レッドソックスに移籍。それで球団が得た移籍金の一部を「ファンに喜んでもらえることに使おう」ということになり、球団史上初めてテレビCMを作ることになったのです。

この歴史的なプロジェクトには、私もコンセプトづくりから参加させてもらいました。

ピッチャーから始まって、キャッチャーが捕って……と、ひとつのボールをみんなでつないでいくというイメージを考案し、採用してもらいました。

CM制作、放送というのはとても大きなお金がかかる事業です。オンエアする日は決まっていて、それまでに完成させなければならない重圧が日に日に強まります。広告代理店には、たくさんの人が分業で関わっていますが、当時は球団職員の人数も少なく、このプロジェクトはほぼ私ひとりでさばいていました。押し寄せるような電話やメールに対応するだけでもヘトヘトになる日々でした。

ところが、完成したそのCMがテレビで放送されることはありませんでした。あえて詳しい説明はしませんが、CMの放送を自粛せざるを得ない事態になりました。

結局、地上波で放送はされませんでしたが、そのCMは2007年シーズンの主催試合でビジョンに上映されました。

体験型イベント「サラリーマンナイト」ができた背景

集客を考える上でライオンズの強みと言えるのが「自前の球場であること」です。

大げさに言えば、自前の球場なら何時間使っても使用料は同じ。これは首都圏を本拠地とする他球団にはない大きなメリットでした。

そこで考え出されたアイディアが、「試合が終わった後にお客さんをグラウンドに入れちゃおう」というものです。球場の改修を行った2008年シーズンのことでした。

名付けて「サラリーマンナイト」。平日試合後、社会人の方なら希望すればどなたでも参加できます。

目玉になったのは、私が打つノックのコーナーです。ついさっきまでショートに中島宏之選手、セカンドに片岡易之(現・治大)選手が守っていたグラウンド。ライオンズファンなら、守備位置につくだけでも大興奮です。

私が打つノックはわずか1球。それを捕ったらファーストに投げるというだけのことですが、これは大いにウケました。

グローブは貸し出ししないので、各自で用意してもらうよう告知していました。ですから、サラリーマンの皆さんは、朝、電車通勤する時からカバンにグローブをしのばせていたわけです。それを思うだけでも、やってよかったなと思います。

女性限定の野球体験の日もやってみました。ノック、バッティング、ピッチング。ほとんどの方は、経験がないのでマウンドから1球投げても届きません。でも、まだ先ほどまでピッチャーが投げていた、スパイクの跡が残っているマウンドに立てば、すごく高くて、すごく遠いのを感じてもらえます。ホームベースが小さく見える。野球の難しさ、野球選手のすごさを理解して、より野球が好きになってもらえます。

これらの体験型イベントを考案したのは先輩方でしたが、「大成、参加者みんなにノックできるか?」と聞かれて、ふたつ返事で「やりましょう!」と答えたのがスタートでした。それが集客増に直接つながったかは不明ですが、やった甲斐がありました。

最初の年は木曜日だけでしたが、次の年からはキッズデーなど曜日によってイベントが変わる「AFTER THE GAMEイベント」として全試合後に開催。現在、私は別の部署になったためノックをしていませんが、たくさんのOBが協力してくれて、現在まで続いています。

20年シーズンよりメットライフドームに新設される、獅子ビル2・3階と3塁側コンコースを繋ぐデッキ(イメージ)。デッキにはビジョンも設置されるという。
©SEIBU Lions

次回は、私が現在所属している「リレーション・メディアグループ」の仕事、中継映像のビジネスについてお伝えしようと思います。

『球団職員の世界』は次回3/13(金)更新予定です、お楽しみに。