100ほどのキャンペーンが同時で動いている

――なるほど。今後はそういうことも意識して提案していきたいと思います。では、DMMブックスさんならではの販促について聞かせてください。

南川 出版社様からご提案いただけるキャンペーンであったり、我々のほうで独自に提案してやらせていただくキャンペーンだったりと、基本的にもう365日、常時数十から多いときは100ほどのキャンペーンが同時でパーッと走っている状況ではあるんです。それに合わせて「スーパーセール」を年に数回、ゴールデンウィーク、夏休みや年末年始にやってまして、そのときにもポイント還元を大々的に売り出してやるんですが、場合によっては90%ぐらいポイント還元されるものもあったりします。

電子書籍って、価格を変更できるところが紙との大きな違いだと思うんですが、とはいえ、ただの割引ではなくて、一度ポイントとしてお渡しして、そのポイントを使って、また違う本を買っていただくという形にできますよね。DMMブックスが一番お得だと言ってくださるユーザーさんもいらっしゃるので、その辺をウリにしてる部分はあるかなと思いますね。

あとは、商品的な部分でいうと、我々は電子書籍専門のサービス会社ではないので、その辺が逆に強みになっていて、通販事業部門があるので新しくグッズ付きの限定版とかを作らせていただいたりしてます。電子書籍はその場でお渡しして、後日グッズを郵送する仕組みは、通販事業があったり、倉庫があったりするからできるサービスかなと思いますし、電子書籍だけを専門でやられてるストアさんだったりアプリさんだったりでは難しいサービスかなと思ってるので、そこは強みだと思っています。もちろん、動画や音声のデジタルデータを電子書籍の付録としてつけた限定版もあります。

――購入者へのプレゼント企画をしたくても、物を送るシステムがないとできないですから、そこは本当に強みですよね。

南川 写真集とかは特にですけど、最近はチェキのプレゼントが定番のキャンペーンになっていて好評なんです。抽選なんですが、たくさん応募いただいてます。あとは、例えば写真集の撮影前から、動画付き特典の提案をさせていただいて、実際の撮影のときに別でカメラを回しておいてもらって、オフショット的な動画を作ったりしています。

――少し話が戻るんですけど、リアルなグッズ付きの限定版って在庫はあるんですか。

南川 グッズ付きで限定版を作るときは、基本的に期間限定の受注生産をさせてもらってます。

――受注なんですね。

南川 グッズはどれだけの数を作ればいいのかと、在庫をストックするリスクがあって、それを我々が負担するにしても、出版社様が負担するにしても、どちらにとってもリスクになってしまうので。であれば、期間限定受注生産にしちゃいましょうと、わかった数だけ作ればリスクはどちらにもないですしね。

――電子書籍で受注生産という形は新しい試みですね。

南川 いろいろと試させていただいたなかで、抱き枕カバー付き限定版とか作らせていただいて、本自体は1000円ぐらいの価格のものが、抱き枕カバー付きだと1万5000円とか。

――ほぼグッズ代みたいな感じですね

南川 なんですけど、めちゃくちゃ売れましたね。

――それは写真集ですか、コミックですか。

南川 コミックです。人気の作品だったんですが、ファンの方に刺さったようで。

――いいですね。いろんな売り方があるんですね。

南川 写真集でもタレントさんだったりや俳優さんのグッズって、ユーザーさんは欲しいと思うので、そういった企画はありかなと思ってます。1冊の写真集を作るだけでバリエーションって3パターンぐらい作れると思うんです。通常版と、ちょっとボリュームを増やした増量版と、さらにオフショットの動画とかを付けた限定版と、なんならグッズまでつければ4パターンとかで作れますからね。

――それって例えば、全部欲しい人が4種類買うのって可能なんですか。

南川 もちろん買っていただけます。僕らにとって一番いいのは4種類全部買っていただくことですけど、全部ついてるバージョンでもう1種作ると、本は1冊でいいけど特典は全部欲しい方にもニーズはありそうですよね。パターンはいろいろと作れるので、売り方を工夫できるのが弊社ストアの面白みかなと思いますね。

2022年12月から新たに「DMM TV」がスタート

――かなり面白いですね、ちょっと食いついてしまいました。あとは、DMMさんは2022年12月から新サービスをリリースされていますね。

南川 12月1日に「DMM TV」というアプリがリリースされました。アプリは基本、動画のサービスが中心になっていて、かつ、流す動画もアニメや漫画原作ドラマ、映画、あと一部なんですけど漫画の特集をするバラエティー番組とか、いろいろなものが見れます。

アプリでは動画だけではなくて、電子書籍も購入ができる形になっているので、今まで電子書籍を使っていなかったユーザーさんにも電子書籍を手に取りやすくなっています。アニメを見たら原作も読もう、という形で親和性が作っていければいいなと思っています。

――アニメと電子書籍が相乗効果で動いてくれたらいいですね。

南川 まさにそれが狙いどころです。

――では、DMMブックスさんならではの売れてる本やジャンルを教えてください。

中世古 他書店に比べまして、弊社は男性ユーザーが多いサイトになります。そのなかでも異世界転生系や、セクシー要素もある青年漫画が売れていると思います。最近は女性向けですと、アニメ系の作品以外では悪役令嬢モノ、異世界転生と親和性があるような作品が売れていたりします。あと他書店さんのランキングでは見ないのに、うちでずっと上位ランクをキープしている『桜田の××レポ』だったり、他書店さんとは違うランキング傾向かなと思いますね。

あとは徐々に、縦読みマンガもだんだんランキングに入ってくるようになってきました。集英社さんの『氷の城壁』は弊社でも人気なんですが、DMMグループのGIGATOONスタジオから出ている『夫を社会的に抹殺する五つの方法』という不倫からの復讐漫画があるんですけれども、秋ごろからどんどんランキングに入り始めていますね。

――GIGATOONを始め、縦読みマンガは無視できない存在になってきましたね。あと女性向けだと、BL作品も順調に伸びているんですね。

南川 スーパーSALE合わせで仕掛けたものがバズりまして、そのときに飛躍的に伸びたジャンルの一つとしてBLがありましたね。それ以降はありがたいことに、女性のユーザーさんもじわじわと増えています。2022年の夏のスーパーセールで、BLとTLの二つのジャンルのポイント還元を全作品ほぼ70%にさせていただいたことでBLの売上が順調に伸びているので、TLジャンルより、どちらかというと親和性が高いのはBLなのかもしれませんね。

――2021年4月のセールはすごかったですね。絵描き用参考資料などがセールのときにもすごく伸びたと思うんですけど、いまだにずっとデッサンものやポーズ集がランキングに入っていますね。

南川 絵描きさんだったり、個人で同人活動をされてたりするような方がユーザーさんに多いのかなと思いますね。

――クリエイターさんが多い印象です。またBlenderや3Dソフトなどの使い方の本もランキングにいますし、自分たちで何か作りたい人たちがお客様に多いんでしょうね。

南川 そういった本は単価が高いし、僕らがポイント還元をくっつけることで、“DMMブックスで買うのが一番お得かも”とユーザーさんに思ってもらえてるんじゃないかなと思います。

――確かに単価が高いと、思わずポイントを計算しちゃいますもんね。

南川 カートに入る100冊まで70%オフっていうセールをやらせていただいたときに、100冊ギリギリまでカートに入れたり、いかに高い本を買うかで、合計金額が衝撃的な数字になったりして。

中世古 出てましたよね、100冊チャレンジみたいな。「DMMブックスが今セールやってる」「初回購入者だったらこのラインナップがめっちゃお得」とおすすめしてくれるTwitterが回ってましたね。

南川 ユーザーさんがそういうプッシュをしてくれる100冊セット、俺のおすすめ100冊セットみたいなものをTwitterに上げてくださってたりとか、あと実際そのカートで購入するときの総額が十数万円が数万円になりました、みたいな購入画面とかをスクショに撮って上げてくださってる人がいたり。ユーザーさんが宣伝してくださったんで、めちゃめちゃありがたかったですね。

――一人の女性のつぶやきが発端だったとか、すごいですね。

南川 あれは本当にTwitterさまさまでした。そのキャンペーンを始めた数日間は、多少の伸びはあったんですけど、爆発的ではなかったんですよ。でも、そのつぶやきで一気に広がってトレンド乗り始めてからが劇的だったので、全てTwitterのおかげっていうのは間違いないです。