悩みのひとつは人手が足りない!?

――まさに編集長ですね。それでは南川さんのお仕事を教えてください。

南川 僕はストア事業のDMMブックスというサービスを全般的に見ています。部署のなかでもチームが分かれていて、ざっくり言うと僕らみたいな営業は、出版社さんとかといろいろなキャンペーンの相談だったり、「限定版を作ってください」みたいなお願いだったり、いろいろなご提案をしたり許諾を取ってきたりしています。

そこから納品いただく作品管理は、別に運用チームが担っています。弊社でいうと金沢にもオフィスがありまして、運用チーム側はみんな金沢にいるんです。出版社さんとか取次会社さんから納品していただいたデータを確認して、配信できる状態にして、どこに書影を出すかの編成的な部分をやってくれていて、DMMブックスが回ってます。

あとは、作品を知ってもらうというところで広告やプロモーションの大きい企画はマーケティングだったり、WEBサービスということで開発が屋台骨としてあるので、たくさんエンジニアの人たちがいるので、そういった形で役割分担しながら、日々粛々とお店をいかに大きくするかを考えつつ動いてます。

――いろんな人たちが書店さんを支えているんですね。

南川 そうですね。電子書籍事業部という形では、運用さんたちも含めて100人ぐらいはいるんじゃないかな。

――「GIGATOON」だったりの新企画もあって、どんどん人を増やしてやってらっしゃるんですか。

南川 増やしてもいますが、最近急激にいろいろ始めてしまったので、人手が足りないという状態ではあります。

中世古 最近は求人情報も積極的に出させていただいていて。前職が出版関係とは全く関係ないコンサルタントだったり、いろいろなバックボーンをお持ちの方々がいらっしゃるので「どんな方でもお待ちしてます」って感じです。

電子書店は「制約がない」からこそ難しい

――書店員としての面白さを感じるときを伺いたいんですが。

中世古 クーポン施策のキャンペーンで、ちょこちょこDMMブックスの名前がTwitterなどのトレンドに入るようになったんです。自分が使っているSNSなどで自社のサービスを目にしたり、「今年もセールが来たね」とTwitterユーザーの方々が盛り上がってるのを見ると、お客様のもとに届いてるなっていう実感が得られますね。マンガ家さんが呟いてくださったりすることもあります。

――それはうれしいですね。

中世古 そうですね。漫画家の先生にも届いているし、そのファンの方々にも届いて、すごくやりがいを感じました。

あとは、新しい作品も古い作品もセットで売り出せることですね。もともとマンガが好きなんですが、例えば60年代だったり、70年代80年代などの古い作品もずっと好きだったので、同じジャンルでまとめたらどうだろうと思って。

紙の書店さんですと、在庫がないと一緒に売り出すのは難しいと思うんです。電子の場合は、配信さえされていれば新しい作品も古い作品も気にせず結びつけて、独自の切り口でキャンペーンを展開できる。それが電子書店員としての面白さの一つにつながるかなと思っております。

――なるほど。時代を超えてテーマでつなげられるんですね。同じ著者の新旧作品をセットにする、という意味かと思っていました。

中世古 そういった切り口でも紹介はできると思います。例えば、初期作品だけ絶版になっていて、紙書籍ではプレミアがついてしまってなかなか手に入らない作品もあると思うんですが、そういった作品も最近はどんどん電子化されるようになってきているので、セットで売り出せたら面白いなと思っております。

――そこは本当に電子書籍の良さの最たるところですね。

中世古 そうですね。在庫という概念がないので、これまで光が当たらなかった作品も電子書籍さえあればっていうところですね。

――ありがとうございます。逆に南川さんは、制約がないからこその難しさがあると。

南川 そうですね。中世古も話していましたが、僕自身、紙の本屋をやっていた頃は発注しなきゃいけないし、在庫があっても全部を棚に置けるわけじゃないので、作品を選び抜いてやらなきゃいけない。置きたいけど置けないっていう作品もいっぱいありましたし、発注しても「もう在庫ないです」って言われて、入荷できない状況とかがすごくあったんで、当時は“電子書店って全部置ける、最強じゃん”と思ってたんですよ。

でも、逆に全部を置ける難しさみたいな部分があって。例えば、紙の本屋だと、あちこち店内を歩いているあいだにコーナーがいくつもあって、何ヶ所も見てもらえるポイントを作れるんですが、電子書店の場合は基本トップページがほとんど全てになっていて、しかも最近は皆さんスマホで見られるので、売り場として見える場所っていうのがすごく小さいんです。

なので、どれだけ作品があっても、推せる作品でいうと紙の本屋よりも遥かに少ないっていう状況があるんですよね。自分で発注してないので“何が来るか”わからない、そのなかで次々と入ってくる作品群から良い作品をいかに見つけていくか。

せっかく作品を預からせていただくので、全部推したいんですけども、どうしても見落としがでちゃうのは悩みの部分でもあります。逆に、電子書店の場合は新刊なのか、古い作品なのかが一切関係ないので、そのなかでいかにトップページのような限られたエリアだったり、キャンペーンだったり、中世古が取り組んでいる「どくしょ部」であったりとか、いろいろなところを通して、いかに面白い作品だったり良い作品をユーザーさんに届けるかも腕の見せどころというか、面白いところではありますね。

――事前にいただいたアンケートで、駅のキヨスクくらいの売り場の後ろに膨大な倉庫がついてるという表現をしていらして、ものすごくしっくりきたんですけど、キヨスクがスマホ画面ってことですもんね。

南川 そうですね。売り場面積的にはすごく狭いんですけど、バックヤードの倉庫は異常にでかいっていう。

――納品するこちらの側としても、まずは作品をどうやって書店員さんに見つけてもらうかは悩みでもあるので、いろいろ工夫してはいきたいところです。

中世古 そういった点で言いますと、出版社様からキャンペーンを提案いただくときに、こんな作品があるんだと気づくことがあります。

――こちらから提案するキャンペーンで改めて知っていただいてるってこともあるんですね。

中世古 ありますね。出版社様もテーマを絞って提案していただいていると思うので、こんな新しいジャンルがあるんだとか、書店員としては次の出会いにつながっていると思います。