二人が選んだ推しマンガは…!?

――仕掛けて売れた作品の一つに、マンガボックスさんの『インゴシマ』をあげてらっしゃいますね。

南川 先ほどの限定付きの商品を作らせていただいてる一つでもあるんですけど、今までは、例えば動画の特典も撮影のときに撮っていただいたり、ありものをつけていただくことが多かったんですけど、マンガボックスさんの『インゴシマ』に関しては、いわばドラマCD的な感じで、音声を別に付録でつけさせていただきました。原作の先生にシナリオも書き下ろしていただき、我々のほうでスタジオを押さえ、声優もアテンドし、制作を全て僕らでやりました。一度やらせていただいたら好評だったので、それ以降は全部の巻でやらせていただいてます。

――そうなんですね。このドラマって何分くらいなんですか。

南川 巻によって違うんですけど、10分くらいですかね。

――限定版ということですけど、まだ配信はされてるんですか。

南川 これは電子限定でつける音声データなので、今もずっと配信はしてます。

――では次に個人的に推したい本を伺います。4つ挙げていただいてるんですけど、このなかでは『光が死んだ夏』(KADOKAWA)は私も読みました。青の表紙が印象的で。

中世古 表紙がいいですよね。どこが舞台とは書かれてないんですけど、たぶん三重県が舞台だと思います。私が出身なのもあって、ちょっと親しみを覚えつつ、方言の使い方が全く一緒なので。

――なるほどなるほど。会話で当たりをつけたんですか。

中世古 はい、わかりますね。あとオノマトペの書き方がすごく印象的な作品ですね。ちょっとBLチックな展開もあって。ホラー描写も手を抜いてないというか、気合が入ってますよね。たしかTwitterでも話題になっていましたし。

――他にもそれぞれ違うジャンルを出していただいてますが、この『転がる姉弟』はどういう内容ですか。

中世古 親の再婚で女の子に弟ができるんですけど、その弟が期待していたカッコいい弟じゃなくて最初は落胆するんですけど、その子がものすごくエネルギッシュで、良くも悪くも憎めないんです。

基本的には、何か事件が起きる作品ではなくて、日常系のほんわかした作風なんですけれど、要所要所に小学生の純粋さゆえの残酷さがあったりして、ただほんわかしてるだけじゃなくて、リアリティのあるところもちゃんと描かれている作品ですね。

あとはGIGATOONスタジオの『地獄祭』ですね。スクロールする前提でイラストが描かれているので、絵的にすごく楽しめる作品かなと思います。

――なるほど、ありがとうございます。縦読みマンガは、男性向けも女性向けもあると思うんですけど、勢い的にはどちらのほうがいいとか特徴はありますか。

中世古 今ですと『夫を抹殺する五つの方法』っていう作品です。ドラマ化も決まりましたし、今後もいろんな展開を予定しておりますので、これからも盛り上がっていく作品かなと思っております。

あとはTLのレーベルもあるんですけれども、売り上げが好調なので、女性向けの作品が刺さってきている印象です。

固執するより本屋はいろいろ取り組むべき

――スマホで見てると見やすいですもんね。縦読みマンガは画面も大きいですし。では、今一番取り組んでること、これから取り組みたいことをお伺いできますか。

南川 書店としては順調に成長させていただいてるんですけど、とはいえまだトップ10に入るくらいで、電子書店にはまだまだたくさん上がいますので、当然もっと上まで、やる以上はナンバー1に向けて成長させていこうと取り組んでます。

さっきもお話に出ていた縦読みマンガは大きく伸びてきてますし、ユーザーさんの読み方だったり、スタイルが変わってきている部分もあるので、どちらかに寄せていくというより、選択肢バリエーションをきちんと増やしていくことで、いろいろなニーズに対してきちんと答えられるストアになっていきたいと準備をしています。

そのバリエーションの一つとして、12月1日のDMM TVのリリースと合わせて、「毎日¥0」というサービスが新アプリとWebストアにも導入されています。

あとは、せっかくDMMというプラットフォームがあるので、他のいろいろな動画や多岐にわたるサービスとの横の連携をさらに強めていきたいなと思ってます。そういったことをやりながら、ユーザーさんに知ってもらわなければいけないところが何よりもあるので、マーケティング広告ももちろんそうですし、SEO的な部分だったりとかでいうと「どくしょ部」などできちんとユーザーさんに訴求して、さらに認知されるようにしていきたいなと思います。

――若い人たちには、マンガアプリに毎日アクセスして1話ずつ無料で見る、ということがルーチン化している人たちも増えているようなので、そうやって選べるのは多様化という意味でもいいですね。

南川 1話を3~5分くらいでパっと読める状態を求めていたり、お金がかけられないっていう若い人たちには「毎日¥0」のようなサービスは必要かなと思いますし、まず何より最初の冒頭が無料であったとしても、本を読む、漫画を読むっていう習慣づけをしていかないと、そのあとの課金にも当然つながらないわけです。

日本人の半分は本を読んでいないとか、年に1冊も読まないみたいなデータがあるので、それを考えたときに、まずは読書人口を増やさないといけないなと。弊社に限らず市場全体としての課題かなと思っているので、ユーザーさんのニーズに合わせたサービスを提供するっていうのは、本屋としての使命かなと思ってます。

――まず読んでもらう、触れてもらうっていうことが大事ですよね。それでは、最後に電子書籍の今後についてお願いします。

南川 先ほどの話とほぼ共通してしまいますけど、多様性はすごく広がってきてますし、国内だけではなく海外に目を向けると、プラットフォームとしては、縦読みマンガだとスマホのアクションが世界共通なので、これから主流になってくるのではないかなと。今はコミックだけですけど、文字モノでも同じように、スマホで見ることをスタンダードにした形で表現される作品も出てくるかもしれませんし。

GIGATOONスタジオで作る側としては、いかに面白いコンテンツを作り出せるか試してますが、逆にブックストアとしては自社作品も含めたいろいろな作品を扱わせていただくなかで、どういうサービスを提供するのが良いかは常に考えていかなきゃいけないなと思ってます。変に固執するより、本屋はいろいろ取り組むべきだろうと思っているので、そこはやり続けたいなと思います。

――柔軟なうえにスピード感があるので、すごいところまで走っていきそうですね。期待しております、ありがとうございました!