もはや女性が耐える時代ではない。不幸な結婚生活、抑圧された結婚生活にくたびれてしまうなら、別れの道を選ぶのもひとつです。 離婚問題を知り尽くした現場最前線の弁護士がいまさら聞けない「慰謝料」にまつわる知識を話します。

※本記事は、吉成安友:著『くたびれない離婚』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

慰謝料の相場感ってどのくらい?

慰謝料とは、相手方が不貞行為、DV、モラハラなどといった不法行為を行ったことによって被った精神的損害に対する賠償です。離婚の際の慰謝料には、不貞行為等によって生じる苦痛の慰謝のためのものと離婚そのものによって生じる精神的苦痛の慰謝のためのものがあります。ただ、裁判の場合も合意により決める場合も、基本的には両者を区別せず、一括して処理するのが通常です。

離婚の訴訟で認められる慰謝料は、それほど高額ではありません。以前は、そんなに安いんですか? と驚かれる方もいましたが、最近はインターネット等を皆さん調べていて、そんなに高くはならないのをご存じの方が多いと感じます。

ときどき、芸能人の離婚で慰謝料が何千万円という報道がされたりします。もちろん、お互い納得すれば、高額でもいいのですが、そうした報道の多くは、おそらく財産分与と区別がされてないのではないかと思います。以前、自分から桁違いの慰謝料を払いたいという方がいましたが、こんなケースには二度と出会わないのではないかと思います。

実際、家庭裁判所が公表している2011年の認容件数は以下の通りです。

 ・100万円以下 208件(28.2%)
 ・200万円以下 196件(26.6%)
 ・300万円以下 183件(24.8%)
 ・400万円以下 53件(7.2%)
 ・500万円以下 60件(8.1%)
 ・500万円以上 37件(5.0%)

このように、100万円以下が一番多く、300万円以下が8割であることが分かります。
不貞のケースでも、通常は100万円から300万円くらいというのが実感です。

相手が金持ちだから高額になるわけではない

以上のように慰謝料額は比較的低額ですが、事案によってかなり幅があります。
その幅の中で、何が高額化させる要素となるのか?

精神的損害以外の賠償の場合は、客観的な損害の状況等が額を決定する要因になるわけですが、慰謝料の場合は精神的なものなので、損害を客観的に明らかにすることが必ずしも容易ではありません。そうなると、額を決める最大の要素は、客観的に見える部分、すなわち、相手の行為が具体的にどういったものであったかということになってくるかと思います。

例えば、浮気も一時的なものだったのか、それとも長年続いていたものだったのか等から、悪質であればあるほど、それだけ損害も大きいだろうと推測されると思います。また、婚姻期間、請求者の年齢等も、ダメージが大きいと判断される要素という意味で高額化させる要因だと思います。

一方、慰謝料は、あくまで損害を賠償するというものですので、相手が金持ちだったらたくさん取れるかというとそういうわけではありません。ただし、請求者側が、資力に乏しく、離婚により窮状に追い込まれるような場合は、それも精神的損害を拡大させる要因といえるので、高額化させる要素になると思います。