新型コロナウイルスに関するニュースを見て、今まで以上に健康管理に気をつける人も多いはず。そんな中で、意識的にハリのある声を出すことは、ジムでトレーニングをしているのと類似の健康効果が期待できる。と教えてくれたのは数多くのテレビ番組にも出演する山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介医師。ここでは、健康寿命を延ばすために声筋(のど)を鍛える方法を紹介する。
※本記事は、渡邊雄介:著『声の専門医だから知っている 声筋のすごい力』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。
のどの筋トレはスクワットと同じくらい重要!
最近、つまずくことが増えてませんか?
“なにもない"ところでつまずいていませんか?
もしくは、のどがムセたり、声がかすれたりしていませんか?
結論から言うと、この問いにひとつでも「はい」と答えた人は、「声筋」と呼ばれるのどの筋力が相当衰えている可能性が大。今すぐに対応が必要です。
のどの役割とは、きれいな声や歌い声を出すだけではありません。一見無関係なようですが、声筋は「発声」「食事」「呼吸」だけでなく、「力を入れる」「踏ん張る」という役割を持っているのです。
私はこのように生命維持において重要な役割を果たすのどの筋肉を“声筋”と名付けました。一見無関係な「のど」と「つまずき」にはとても密接な関係があるのです。
つまずくことが増えた高齢者は、同時に声がかすれたり、昔と比べて声が老けているという特徴があります。逆に言うと、スタスタと歩いている高齢者は総じて声にハリがあります。
これは偶然の一致ではありません。のどが丈夫であれば、「誤嚥」や「転倒」といった寝たきりや介護を招くリスクを遠ざけることができるのです。自分はまだ若いから関係ない、と思った方も注意してください。ほとんどの日本人が知らないことですが、「声筋は30代から衰える」という現実があるからです。
オリンピック選手を見るとよくわかります。活躍している一流のアスリートたちのほとんどが10代、もしくは20代。つまり、体を鍛えて、身体能力を高め続けることができるのは、残念ながら「20代まで」ということなのです。声筋も筋肉の一部です。やはり「声筋のピークは20代まで」と謙虚にとらえてください。
「声がかすれるようになった」
「声がしわがれるようになった」
「以前は出せた音域が出せなくなった」
「声が通らなくなった」
「響きがわるい」
これらの「フケ声」の症状が出たら要注意。ぜひ、トレーニングやケアをはじめるべきだと思います。
声筋を鍛えることは、スクワットなどに匹敵する大事なトレーニングです。
とはいえ、大げさな筋トレをする必要なんてありません。ごく簡単なトレーニングで、年齢を重ねてもキーの調節なんてせず、昔と同じ音程で歌い続けることは可能です。それは、プロじゃない一般の人でも同じことだということをぜひ知っていただきたいのです。